スピード化、IT化が進む中で、じっくりと腰をすえて改善活動に取り組むよりも、早期に成果を求められるケースが増えている。しかし、そうした姿勢では、真に企業の体質を強化していくことは困難である。改善活動は、地道に継続してこそ価値を生むことになる。しかし、改善の継続には様々な難しさが内在している。今回は、改善の継続から元気を生み出すための視点を考えてみたい。

地道な改善で
赤字から2桁の黒字へ

 少し古い話になるが1980年代半ば、長野県に拠点を持つ、ある中堅の電子部品メーカーでは、NC設備(数値プログラム制御付きの加工設備)、自動倉庫、自走搬送車を駆使した量産効果により、創業以来最高の売上高と営業利益を記録していた。

 しかし、プラザ合意直後の需要低迷により、売上が下落、営業損失となり、ボーナスの支払いにも困る事態となった。それまで、東京からいわゆるもみ手で融資の依頼に来ていた取引銀行は、掌を返したように、社長を毎週東京に呼びつけ、昼食も出さずに毎週の収支を報告させた。この後、さらにバブル崩壊でその対応に……となれば、よく耳にする失われた10年という話になるのだが、そのときこの社長は、同様の規模のメーカーを次々に訪ねて、自社の問題の原因を深く考えた。

 その中に、「これだ」と直観できるメーカーがあった。大規模な投資を極力抑え、製品在庫をゼロに近く保っていた。自分が苦心して調達した資金が、実は設備や在庫として工場の中で眠っていることに気づいた社長は、自動倉庫と自走搬送車を全て撤去し、NC設備も全て人手による設備に戻した。

 そして、徹底して生産リードタイムの短縮に取り組み、設備を内製する工房を作り、材料・仕掛り・製品の在庫を減らしていった。設備が小型・内製になることで、段取り時間が短くなり、小ロット生産が可能になる、という改善のサイクルを繰り返すことで、業界平均の半分以下という生産リードタイムを実現し、他社に流れていた注文を取り返して、シェアをトップレベルに回復させた。