ピーター・ドラッカーは、権力の一極集中化の害悪を身をもって知っていた。彼がいみじくも述べたように、組織は手段であるにもかかわらず、官僚制は組織を目的化してしまう。21世紀の経営は、組織による効率化ではなく、人間ならではの能力が価値創造の源泉となることを目指さなければならない。その処方箋として、「世界で最も影響力のあるビジネス思想家」であるハメルが主宰するマネジメントラボによる「未来の経営に向けた25項目」を紹介しよう。(コンサルティング編集部 岩崎卓也、音なぎ省一郎)

21世紀は「マネジメント2.0」の時代

 編集部(以下色文字):現在、新たな思想革命の胎動が感じられますか。

 ハメル(以下略):もちろんです。すでに現在進行形といえるでしょう。

 ナチスドイツの暴政を経験しているピーター・ドラッカーは、権力の一極集中化の害悪を身をもって知っていました。だからこそ、官僚制の弊害と限界をいち早く指摘し、警鐘を鳴らしたのでしょう。彼がいみじくも述べたように、組織は手段であるにもかかわらず、官僚制は組織を目的化してしまう。

 また、ロンドン・ビジネススクールの尊敬すべき同僚であるチャールズ・ハンディは、「20世紀は組織の世紀だったが、21世紀は人間の世紀になる」と述べています。言い換えれば、組織による効率化ではなく、人間ならではの能力が価値創造の源泉である、ということです。

 『エクセレント・カンパニー』の著者で知られるトム・ピーターズも、10年以上前に「リベレーション・マネジメント」(邦訳『自由奔放のマネジメント』ダイヤモンド社)、すなわち「解放の経営」というタイトルの本を発表していました。

 有名無名を問わず、同様の意見や主張を掲げる人たちは枚挙に暇がありません。調べるまでもなく、官僚制を称賛する人よりも、批判する人のほうが圧倒的に多いはずです。すでに機は熟しているのです。

 私がディレクターを務めるマネジメントラボは、2008年5月、カリフォルニアのハーフムーンベイに、私の素晴らしい師であるC・K・プラハラード、「学習する組織」を提唱したピーター・センゲ、グーグルのエリック・シュミット、ホールフーズのジョン・マッキーなど、35人の有識者を集め、「インベンティング・ザ・フューチャー・オブ・マネジメント」(未来の経営を発明する)というカンファレンスを開きました。そして、2日間の侃々諤々の議論を経て、図表1「未来の経営に向けた25項目」を発表しました。

経営にもイノベーションが必要である<2>