MBAで教えられている「分析ツール」は知っているだけで仕事に「差」がつく武器になります。本連載ではクリティカル・シンキング、定量分析、交渉、経営戦略などの分野から分析ツールを50個厳選した『グロービスMBAキーワード 図解 基本ビジネス分析ツール50』から、そのエッセンスを紹介します。第2回は「舛添前都知事の辞任のタイミング」がテーマです。

東京都議会自民党は何を考えたのか

今年になってから、海外視察の贅沢な「大名行列」ぶりや、「合法だけど不適切」な政治資金の利用等の問題で都民の反感を買った東京都の舛添要一前知事が6月21日に辞任しました。最終的には、都議会において推薦母体である公明党、そして自民党からも見放され、辞任に追い込まれる形でした。

都民感情としては圧倒的に辞めろとの声が多かったわけですが、都議会の自民党は当初は辞任に追い込むことにそれほど乗り気ではなく、結局は舛添氏が居座ることも予想されていただけに、急転直下の結末にも映りました。

今回は、都議会自民党の立場に立って、なぜ舛添氏をこのタイミングでの辞任に追い込んだのかをPros/Cons分析で分析してみましょう。Prosは好ましい点や良い点を意味し、Consは逆に好ましくない点や悪い点を意味します。

(なお、このテーマを取り上げたのはあくまで分析ツールの例示のためであり、筆者の政治的意見を反映するものではないことを予めお断りしておきます)

分析結果を図示すると以下のようになります。

厳密に言えば、選択肢はこの3つだけではなく、他の折衷案や、全く別の方法もあるかもしれませんが、ここでは話を簡単にするために、この代表的な3つの案に絞りました。

Pros/Cons分析は、何かを意思決定しようとしている際に使うツールとして最もシンプルかつ一定の効果を発揮する分析手法です。人間は、直観的に何かを決めてしまおうとすることや、物事の一面だけを見て何かを決めてしまおうとすることが多いものですが、Pros/Consを冷静に見ることで、そうした拙速(しばしば悪い結果をもたらす)を避けることができるのです。

Pros/Cons分析では、図のようにいったん項目をリストアップした上で、特にどの項目を重視すべきかを皆で考えます。今回は、この問題が7月の参院選に対して全国レベルで与える悪影響が大きいとの調査結果が判明し、官邸がそれを重く見たことが引き金になったとの説があります。

であれば、分析結果からも分かるように、リオ五輪後の辞任はいかにも中途半端で実がありませんし、任期末までの続投は論外ですから、6月の段階で詰め腹を切らせることにしたのは、この分析からもやむを得ぬ判断だったと言えるのです(本来は、さらに早めに引導を渡し、参院選と同時選挙にして税金を浮かせるほうが賢明だったと言えますが、それは後の祭りです)。