創業家の間で経営権争いが繰り広げられるさなか、韓国で裏金疑惑まで浮上し、創業来最大の危機にひんしているロッテ。創業者の長男であり、対立する次男からの主導権奪還を図る重光宏之・ロッテホールディングス元副会長が“騒動”を語った。(「週刊ダイヤモンド」編集部 泉 秀一)

ロッテお家騒動、解任された元副会長が語る“次の一手”しげみつ・ひろゆき/青山学院大学大学院卒業後、ロッテ取締役副社長などを経て、2009年よりロッテHD副会長。15年に同職を解任された。 Photo by Kazutoshi Sumitomo

──弟の重光昭夫・韓国ロッテグループ会長との間で経営権を争うロッテホールディングス(HD)の定時株主総会が6月25日に開催され、実権を握る弟派に3度目の敗北を喫しました。

 3月の臨時株主総会と同様に、「創業者である父の重光武雄を除く取締役7人の解任と、私の経営復帰」を求めた議案は、あえなく否決されました。総会に出席した株主は私一人。勝敗の鍵を握っていた従業員持株会(議決権ベースで約30%の株式を保有)の理事長は、ロッテHD経営側に議決権行使を委任したと思われます。

 ロッテグループは今、創業来最大の危機に陥っています。韓国ロッテの幹部数人に裏金疑惑が浮上し、検察による徹底的な調査が行われています。幹部など既に20人以上が、韓国からの出国停止を命じられている状態で、業務が滞っていると聞いています。

 現地の韓国では、大手紙が1~3面ぶち抜きで報じるなど、マスコミは連日この話題で持ち切り。私も創業家の一人として、また、これまでロッテの経営に関わってきた者として、消費者や取引先の方に申し訳ない気持ちでいっぱいです。

 こうした状況下にもかかわらず、韓国ロッテやロッテHDの経営陣はきちんと説明責任を果たしていない。疑惑の渦中にいる取締役が、6月末にロッテHD副社長に昇進を果たし、他のロッテHD取締役も子会社で昇進しています。弟の昭夫は、「ガバナンス改革に努める」と発言していたはずなのですが、実態は全く逆に動いています。

──裏金疑惑では、日本のロッテ物産の関係もうわさされている。ご自身は裏金疑惑との関連はないと言い切れますか。

 はい。私は全く関係していません。疑惑は韓国ロッテ内で浮上したもの。ロッテでは長年、日本が私、韓国が昭夫というように兄弟で分担して経営を行ってきました。ですから、これは恥ずべきことですが、私は韓国の経営に関してはほとんど実態を把握していなかった。当然、裏金の有無に関して知る由もありません。

 韓国検察は日本のロッテ物産に裏金関与の疑いを持っているとのことですが、事実誤認だと思います。韓国のロッテケミカルが原材料を輸入する際、ロッテ物産を不必要に介入させて裏金工作をしたと疑われていますが、歴史を振り返れば、ロッテ物産が取引の間に入っている理由が分かります。

 ロッテケミカルの前身は湖南石油化学という会社で、2013年ごろまで、日本の三井物産から原料のエチレンやナフサを輸入していました。

 当時、三井物産は韓国のカントリーリスクを嫌い、直接の売買をしたがらなかった。そこで、貿易会社であるロッテ物産が間に入り、湖南石油に売るという形を取っていたと聞いています。

 過去の資料をさかのぼれば、ロッテケミカルからロッテ物産への資金の流れがあるのは当然のことだと思います。