専門店化で見えるのか<br />GMS浮上の未来図イトーヨーカドーエスパ川崎店にオープンした生活雑貨専門店「tanosia(タノシア)」。GMS改革の本丸は魅力ある売場を提案し続けられる仕組みの改革だ

 9月17日、イオン(千葉県千葉市、岡田元也代表執行役社長)は本部にも近い旧カルフール店舗だったイオン幕張店(千葉県千葉市)を舞台に、新たなGMS(総合スーパー)の方向性を示した。彼らが2008年以降取り組んできた改革の末に導き出した答え、それはGMSを「専門性の高い売場の集合体」へ革新することだ。

 イオンは幕張店を舞台に、それまで売場では当たり前だった商品カテゴリーの概念を撤廃、また直営ゾーンや専門店ゾーンといったレイアウト上の垣根も取り払い、これまで事業化を進めてきたペット専門店「ペットシティ」や書店の「未来屋書店」、生活雑貨専門店「R.O.U(アール・オー・ユー)」、SPAモデルを導入したという衣料品専門店「トップバリュコレクション」など、グループの11専門店を店内に組み込んだ。このような専門店導入によるリニューアルをGMS再生の解として掲げ、今後はショッピングセンターの核店舗を含む全国420のGMSで実施、商圏に合わせて店舗の魅力を高めていくとしている。

 もはや聞き慣れた言葉となったGMS改革だが、このような活動の末に示されるGMS再生の道筋は、イオンだけでなくセブン&アイにおいても模索が続いている。

「単にロフトのような専門業態をテナントとして導入することとは、まったく趣旨が異なる。そもそもこのプロジェクトは、イトーヨーカ堂プロパーを活性化させるプロジェクトなのだ」。

 9月18日、イトーヨーカ堂(東京都千代田区、亀井淳代表取締役社長COO)は、セブン&アイグループによる新規事業としてエスパ川崎店(神奈川県川崎市)1階に、生活雑貨専門店「tanosia(タノシア)」をオープンさせた。

 タノシアは、イトーヨーカ堂が同じグループ企業であるロフト(東京都新宿区、遠藤良治代表取締役社長)と共同開発した、まさにGMSイトーヨーカドー売場改革プロジェクトの一環で登場した専門店のひとつだ。アインファーマシーズとグループ各社の合弁会社セブンヘルスケアで取り組むドラッグストア「7(セブン)美のガーデン」やイトーヨーカ堂内でのプロジェクトとして進む「セブンホームセンター」などに加え、新たに登場した。

 冒頭のコメントは、タノシア開発を率いてきたプロジェクトのリーダー役を務めるロフトの金谷信之代表取締役専務執行役員がオープンにあたり語ったものだ。実はこのコメントこそが、イトーヨーカ堂に限らず、いま各社で進んでいるGMSを舞台とした専門店開発の流れを一言で的確に表現したものと言える。長く続くGMS改革だが、その課題は大きく分けて2つ存在する。その1つが、いま各社が進める売場改革で、まさに生活者の支持を取り戻すための改革だ。

 そして、GMS改革のもう1つの課題。それは売場改革を支える企業体制であり仕組みの革新、つまり構造改革だ。専門店の事業構造は、GMSが持つ量販を前提としたものとは、経費構造や商習慣を含め大きく異なる。専門店化を足がかりにこれらの構造改革に踏み込むことがGMS改革の本丸であり、支持される売場をつくり続けるための根本的な課題なのだ。

 イオンとセブン&アイという流通業界の2大企業グループが長年取り組んできたGMS改革の方向性が専門店化に定まった。だとすれば、その評価は、構造改革への道筋を確認できた段階で初めて下すことができ、GMS浮上の未来図も見えてくるはずだ。


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専門店化で見えるのか<br />GMS浮上の未来図

1977年4月20日の「コメリ ホームセンター三条店」オープンから約33年が過ぎ、今年7月には1000店舗体制となったコメリ。ホームセンター参入当初から物流センターを設けるなど独自のチェーンストア理論で、現在は沖縄を除く46都道府県に店舗を展開するHCのナショナルチェーンに成長しました。
コメリの最大の強みは「独自のしくみ」を作り上げてきたことにあります。業態開発や商品戦略、物流システム、店舗オペレーションなどを、辛抱強く、継続して構築してきました。そのしくみの中でも代表格である小型店「ハード&グリーン」には、揺るがない信念のようなものさえ感じます。
今回のコメリ特集では、「独自のしくみ」とはいかなるものか、そして今後の成長戦略をどのように描こうとしているのか、明らかにしたいと考えました。是非ご覧ください。
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