一流と二流を分ける能力「グリット」って?

世界の心理学者が長年追求してきた「人生で成功するのに最も重要なファクターは何か?」がついに研究で解明された!ビジネスリーダー、エリート学者、オリンピック選手……成功者の共通点は「才能」でも「IQ」でもなく、もうひとつの能力「グリット」だった――。これまでの能力観・教育観を180度くつがえし、世界的ベストセラーとなっている『やり抜く力 人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』から、その驚くべき内容を紹介する。

「生まれつきの才能」は重要ではなかった!

 子どものころから、「天才」という言葉を耳にタコができるほど聞いた。

 まるで口癖のように、父はいつも突然こう言った。

「いいか、おまえは天才じゃないんだぞ!」

 夕食の最中でも、家族でテレビを観ていても、CMになったとたんに、いきなりそんなことを言う。あるいは、ソファーにどかっと腰を下ろして、「ウォール・ストリート・ジャーナル」を広げながら、ぴしゃりとひと言。

 そんなとき自分がどういう態度を取ったのか、よく覚えていない。たぶん、聞こえないふりでもしたのだろう。

 父は「非凡な才能」や「生まれ持った能力」にやたらとこだわる人で、つねに他人の能力を品定めしていた。そして、自分の知性がどれだけ優れているか、わが子の頭脳がどれだけ優れているかについても、並々ならぬ関心を抱いていた。

 そんな父の頭痛の種は、私だけではなかった。弟も、妹も、天才児とは思えなかったからだ。三人のうちひとりとして、父のお眼鏡にかなうようなアインシュタイン並みの頭脳に恵まれた子はいなかった。父はそのことにひどく失望していた。そして、凡庸なわが子はいずれも大成しないのではないか、と悩んでいた。