日本経済の根幹を支えていると言っても過言ではない中堅企業。その中で、躍進する企業の経営者は、そうではない企業の経営者と何が違うのか。継続する企業はなぜ継続できるのか。自ら経営の経験があり、また数多くのリーダー取材の経験を持つ、シンクタンク・ソフィアバンクの藤沢久美代表に聞いた。

シンクタンク・ソフィアバンク
藤沢久美代表

1996年に日本初の投資信託評価会社を起業。2007年ダボス会議を主宰する世界経済フォーラムよりヤング・グローバル・リーダーに選出。NHK教育テレビ「21世紀ビジネス塾」キャスターを務めるなど、国内外のリーダーとの交流や対談の機会が多い。著書に『最高のリーダーは何もしない』(ダイヤモンド社)他多数。

 「優秀なリーダーこそ、リーダーらしい仕事を何もしていない」

 これまで、1000人以上のトップリーダーにインタビューを重ねてきた、シンクタンク・ソフィアバンクの藤沢久美代表がたどり着いた結論がそれだ。

 優秀なリーダーというと、先頭に立って力強く皆を引っ張ってゆくカリスマ、というイメージがある。だがそれはもはや過去のもの。今、最前線で活躍しているリーダーたちは、権限を現場に引き渡し、メンバーたちに支えられることで業績を出しているという。

 なぜ、こうしたリーダーシップが生まれてきているのか? 「一つは、消費者の価値観やニーズの多様化です。インターネットの発展によって、小さな価値観やニーズが顕在化し、人の嗜好が量から質へ移ってきました。大量生産された商品やサービスではなく、特別感のあるサービスを求める傾向が強くなったのです。もう一つは、変化のスピード。先週喜ばれたものが、今週には陳腐化しているということが起こる時代になったこと。こうした状況下で、リーダーが自社の商品・サービスを全て把握し、意思決定していくのは不可能。つまり、従来のトップダウン型リーダーシップだけでは“遅過ぎる”のです」と、藤沢代表は説明する。