前回、1位を目指すビジョンについてお伝えしましたが、それを具体的に見せなければ、スタッフは実行に移してくれません。そこで大事なことを教えてくれるのが上杉鷹山の言葉です。重版も決まった新刊『トヨタの伝説のディーラーが教える絶対に目標達成するリーダーの仕事』から、リーダーシップ術を紹介します。

してみせて、言って聞かせて、させてみる

「絶対に1位になる!」というビジョンを語るだけでも昔のリーダーは問題ありませんでした。部下たちが黙ってついてきてくれたからです。

 でも今の時代のリーダーはそれだけではダメ。

「じゃあどうやるか」を具体的に示す必要があります。具体的に説明することで、メンバーに「本当に1位になれるかも」「目標を達成できそう」と納得してもらうことができ、行動に移してもらうことができます。

 米沢藩の第9代藩主・上杉鷹山がこんな言葉を残しています。

「してみせて、言って聞かせて、させてみる」

 上杉鷹山は、財政が悪化した米沢藩を前藩主から引き継いで、大倹約や産業振興などの政策を行い藩政改革に努めた江戸時代屈指のリーダーです。

 彼は多くの名言を残していますが、なかでもリーダーとしての基本姿勢を示しているのがこの言葉です。

「してみせる」というのは率先垂範です。つまり、部下に指示命令する前にまずリーダー自らが手本を見せたり、先頭に立って模範を示したりすることです。

 そして、「言って聞かせる」。目標達成に向かってやるべきこと、業務を進める際の注意点やコツなどを、部下が納得できるまで説明してあげることが大事。

 そのうえで、「させてみる」。見せた手本を真似して実践してもらうということです。

リーダーがまずは「してみせる」

 この一文のなかでも大切なのは、「してみせて」のところでしょう。

「オレの言う通りにやれ」とか「背中を見て学べ」というやり方はもう古い。仕事を覚えてもらいたいなら、しっかり説明すると同時に、手本を見せることが大切です。

 効率的な作業のやり方、道具の使い方、顧客とのコミュニケーションのとり方など、口であれこれと説明するよりは見てもらったほうが早いという業務はたくさんあります。リーダーは商談に同行させたり、実際の作業を見せたりして、部下に学んでもらうようにしましょう。

 もちろん、ただ何も言わずに見せるだけでは理解度を高めることはできません。やってみせる業務を細かく分類して、どういう点に注意するべきか、コツやポイントを提示しながら教えたほうが、学習効果が高まります。

 またリーダーは、これまで経験を積んで覚えてきた仕事のやり方を全てオープンにしてください

 企画書や顧客ノート、業務に関連するデータなど、蓄積してきたものを全て開示することが、スタッフにとっては何物にも替えがたい貴重な学習機会となります。

仕事のやり方をオープンにするということは、リーダーの実績をスタッフに示すということにもなります。実績がある人に何か言われるのと、そうでない人に言われるのでは、説得力が違ってきます。

「自分はこうやってきて、こんな成果が出た」と説明されれば、説得力が出ます。

 その際、注意したいのは単なる自慢にならないようにすること。手本を見せながら仕事のやり方を教えて、その結果どうなるかを自分のケースで示してあげれば、自慢ではなく効果のある手法として受け取ってもらえます。