「一億総活躍社会」実現に向けて企業に求められているのは、正規・非正規を含め全ての社員が力を発揮できるような環境の整備。福利厚生のアウトソーシングサービスから社業をスタートし、社員の「働きやすさ」「働きがい」を総合的にサポートする体制への転換を図るJTBベネフィットの重田毅社長と田中宏和取締役に、同社のこれまでの歩みと今後の展望について聞いた。

「福利厚生」の
アウトソーサーとして創業

社員一人一人が活躍するために、福利厚生を充実させ「働きやすさ」を向上させることは大前提ともいえる。JTBベネフィットは福利厚生のアウトソーシングサービスで業界をけん引する存在だ。

──なぜ「福利厚生」のアウトソーシング事業を始めたのでしょうか?

田中宏和
取締役 経営管理本部長

田中 1990年代後半の景気低迷期に、多くの会社が保養所や社宅の売却などを進めました。しかし福利厚生自体をなくすことはできず、代替手段が求められるようになっていたのです。当時JTBグループとしても、旅行事業だけではない、新たなビジネス領域を創造しようとしていたこともあって、社内ベンチャーのような形で2000年にJTBベネフィットを設立しました。中心は会員制福利厚生サービス「えらべる倶楽部」ですが、その後、お客さまのニーズに応える形で、さまざまなサービスを展開してきました。

──田中取締役は創業時のメンバーと伺いました。当時から勝算はあったのでしょうか。

田中 旅行に関してはそれなりのニーズを見越していました。JTBグループは全国各地に店舗ネットワークを構築し、また全国各地で法人営業担当者も活動しています。そして旅行・宿泊を中心とする多彩な商品ラインアップを有しています。このリソースを活用できることは最大の強みでもあります。
 ただし、福利厚生は旅行だけにとどまりません。JTBグループでは、イチゴ狩りから運動会、著名人を呼んでのセミナーまで、イベントの開催・運営も得意としています。一方、映画やコンサートなどの割引チケットやスポーツクラブ、文化施設の利用など、その他の分野は文字通り足を使って地道に広げていった形でした。

 サービスを提供する上で大切にしてきたことは、従業員の実情に合わせた制度の設計。「えらべる倶楽部」はパッケージ商品ではありますが、旅行などへの補助金の額や設定条件、メニューなど、企業に合わせて細かくカスタマイズが可能です。多様なメニューと相まって「働きやすさ」を向上させることができ、多くのお客さまから評価され、契約数を増やしていくことができた一つのポイントでもあると考えています。

 現在JTBグループは、「総合旅行業」から、あらゆる交流を創造する「交流文化事業」へと発展していっております。個人・法人の両者を顧客として、旅行に限らず幅広い生活支援コンテンツを提供できるJTBベネフィットは、グループの変革を象徴する存在といえるかもしれません。また、健康支援サービス、生活設計支援サービスなど、生活面のメニューが充実している点で、グループ内でも際立った存在となっています。