バーバラ・ミントの「ピラミッド原則」といえば、世界の一流コンサルタントが必ず学ぶ論理思考・文書ライティングのバイブルです。そのピラミッド原則を日本人向けにわかりやすく紹介した『入門 考える技術・書く技術』は、2011年の刊行以来、定番の教科書となりました。
昨今では、プレゼンやリポートで、スライドやパワポを使用するケースが増えてきています。ピラミッド原則をスライドで使うにはどうしたらよいか、との疑問に答え、『入門 考える技術・書く技術【スライド編】』が登場しました。待望の新刊より、内容の一部を紹介します(全2回)。

 カラフルな図や画像、3D化されたグラフ、動画……ビジュアル作成のテクニックはどんどん進化していますが、読み手の立場で見てみると、どうでしょうか。無駄が多い、結局何が言いたいのかがわからない、というのが意思決定者や上司の典型的な感想です。
 スライド・レポートで重要なのは見映えではありません。内容、つまり、伝えたい「考え」を明確に組み立てることです。

わかりにくいスライドが氾濫する

「これだけの枚数を使って、言いたいことはこれだけなのか?」「それで、結局何を言いたいのか?」「ちょっと待って。これでどうしてこんな結論になるのか?」……皆さんのスライド報告を聞く上司の典型的な反応です。

 私が主催するスライド研修では、顧客企業で実際に作成したスライドを課題として取り入れることにしています。研修参加者は、まずは読み手の立場で、実例スライドに含まれた情報とメッセージを読み取らなければなりません。そこで改めて「何とわかりにくいスライドなのだろう。私もこれと同じようなスライドを作っていたのか」と気づきます。これは書き手の立場では決して持つことのない気づきです。

これだけの枚数を使って、言いたいことはこれだけなのか?

●ともかく無駄なスライドが多い。意味のない写真や画像の貼りつけが随所に登場する。その結果、スライド1枚で済みそうな内容が中身の薄い3枚のスライドに膨らんでいる。

●単純な棒グラフで十分にもかかわらず、一見見映えのよい立体グラフで表示されている。しかし、立体表示にしたために、逆に軸から数値を読み取りにくくなっている。

●スライドの説明がカラフルな色で表示されている。しかし、色数を使いすぎているために、逆に本当に強調すべき箇所が目立たなくなっている。

 スライドにはカラフルな図や画像が満載で、見映えをよくするのにかなりの時間を使っているようです。しかし、残念ながら中身を考えることにはあまり時間を使っていません。つまり中身の薄いスライドになっています。「中身が薄い」とは「考えが浅い」ということです。どうやらスライド作成に関して基本的な誤解があるようです。

結局、何を言いたいのか?

●各スライドに見出しはある。しかし何を伝えようとしているのか、メッセージがない。見出しとは、「何について書いているのか」を示したもの、すなわち、メッセージの種類を表現したものです。メッセージとは、「伝えようとする考えの中身」そのものです。見出しも重要ですが、本当に重要なのはメッセージです。

●図表はあるし、図表の説明もある。しかし図表から何を言いたいのか、メッセージがない。メッセージとは伝えようとする考えの中身であり、図表の説明ではありません。

●よく見ると、ところどころにメッセージらしきものはある。しかしメッセージがバラバラで、結局何を言いたいのか、結論メッセージがない。あるいは、結論メッセージが「さらなる営業努力が必要」など、当たり前の一般論や抽象論で終わっている。

 情報はあるのだが、メッセージがない、具体的な結論がない、結局何を言いたいのかがわからないスライドです。一番よく見かけるタイプです。

どうしてこんな結論になるのか?

●スライドに目次がない。その結果、メッセージがどのように展開しているのかわからない。目次のないスライドのほとんどは展開がしっかりと練られていません。

●1、2枚の簡単な背景説明のスライドの後、いきなり10枚を超す解決案が登場する。しかし当然ですが、プレゼンに参加する聴衆はそれぞれ背景に対する理解度が異なります。したがって、いきなり解決案を提示されてもついていけない人が大勢出てきます。

●問題状況を詳しく説明しているのはよいが、その後、ほとんど脈絡もなしに唐突に解決案が登場する。しかし問題状況と解決案の関係をじっくりと考えてみると、「なぜその解決策がベスト案なのか」「他に解決案はないのか」などの説明が一切ないことに気づく。

 考えの展開がわかりにくい、あるいは考えがうまく構成されていないスライドです。そのほとんどはスライド作成以前の問題です。つまり、スライドで伝えようとしている考え(メッセージ)の組み立てそのものに問題があるのです。

*続きは明日、11月22日公開