SNSの広がりなどで最近重要度を増すのが、人やモノ、そして情報を「つなぐ」ということ。本来それは手段であるはずだが、つながることで新たな価値が生まれる。それを平易な言葉で表現するなら「幸せ」だろう。数値化できない幸せの定義、ビジネスへの落とし込み、そして自身の幸せ体験について、インフォテリアの平野洋一郎社長に聞いた。

IT企業の経営理念に
「幸せ」を記した思い

 国連が発表している「世界幸福度報告書」が興味深い。

 2016年の最新版で「最も幸せな国」として選ばれたのはデンマークで、以下スイス、アイスランド、ノルウェー、フィンランドと続く。北欧の国が上位を占める背景には福祉の充実があり、単純な比較はできないが、日本は157カ国中53位だった。

 経済指標で序列をつけるなら先進諸国が上位にラインクインするのかもしれないが、「幸せ」は人それぞれの感じ方によって違い、数値化は難しい。その「幸せ」を経営理念として掲げるのが、XMLというネット上のさまざまなサービスをつなぐ技術(言語)を中核にソフトウェア開発を行うインフォテリアである。

社員に起点を置きながら
幸せを連鎖させていく

平野洋一郎
インフォテリア
代表取締役社長/CEO

1963年生まれ。熊本大学を中退しソフトウェア開発ベンチャー設立に参画。日本語ワープロソフトの開発などに従事した後、ロータス(現IBM)に転職。1998年にインフォテリア設立と同時に現職に就任。XML技術者育成推進委員会副会長、先端IT活用推進コンソーシアム副会長、ブロックチェーン推進協会理事長も務める。

「1998年の創業時から、ソフトウェア開発で企業の競争力と価値を高める提案を続けてきました。上場した2007年にまとめた経営理念は3つあり、『発想と挑戦』『世界的視野』は、上場後もベンチャー精神を忘れず、世界を射程に入れたチャレンジを続ける意思を確認する意味を込めてあります。もう1つが『幸せの連鎖』で、IT系企業の経営理念としては意外に思われるかもしれません。

 確かに幸せは数値化できませんが、弊社の製品やサービスを利用することで幸せを感じていただかなければ、持続的なお付き合いができないのも事実です。この言葉の力点は“連鎖”にあり、一瞬で終わる目先の利益ではなく、水面に広がる波紋のように幸せを連鎖させてこそ意味があります」

 連鎖には起点が必要になるが、平野洋一郎社長はそれを「社員」に置く。社員が幸せを実感し、会社に所属することに誇りを持ち、各自が目標を定めて意欲的に仕事に向き合ってこそ、顧客に幸せを連鎖させられる。その輪が広がっていけば社会の発展にも寄与できる。「幸せの連鎖」という経営理念には、そんな思いが込められている。

 顧客第一主義――「顧客満足度」という言葉を持ち出すまでもなく、経営の要諦として扱われることの多い言葉だが、平野社長は「お客さまを大切にするのはどの業態も同じですが、我々のビジネスにおいて、要望をすべて聞くのがお客さまの幸せにつながるとは限らない」と言う。