ギフト市場が大きく変貌しようとしている。ギフトの意義をより深めたものや、ギフトを営業やマーケティングのための道具として活用するものが出現してきているのだ。その背景にあるのがITの活用だ。従来のカタログギフトにはない商品提示の柔軟性や収集情報の活用ができ、ギフトを戦略的なものに変えようとしている。ギフトビジネスのIT活用について、正林国際特許商標事務所の正林真之所長に聞いた。

 2016年に実施した矢野経済研究所のギフト市場に関する調査によれば、「ギフト市場規模推移と予測」(下図表参照)は、15年の国内ギフト市場の規模は小売金額ベースで9兆9535億円、16年には10兆円の大台に乗る見込みになっている。前年比伸び率は1%以下で推移しているものの拡大傾向が続くとみられている。

 正林所長は、「拡大と同時に注目されるのが、ギフト市場の内実の変化」と語る。かつては冠婚葬祭の引き出物などフォーマルでのギフトが市場を牽引してきた。しかし最近は、各種の記念日、ちょっとしたお礼など気軽にギフトを贈る非フォーマルギフトが市場をけん引するようになってきたのだ。

 それは同時に「贈るという行為ではなく、贈るものにこだわる流れを生み出してもいます。

例えば、従来のカタログギフトのような「当たり障りのないもの」ではなく、もっと贈る側の心遣いが伝わるような商品を選ぶ傾向が強まっています」(正林所長)。

「ITギフト」の特許や
ビジネスモデル申請が目立ってきた

 正林所長がそんな実感を持つのも、ITを使ったギフトの贈り方を巡る特許、ビジネスモデルの特許申請などが目に付くようになったからだ。

 ITを活用したギフトサービスには、さまざまなモデルがある。紙のものをインターネットのシステムに単に置換したという単純なものから、マーケティングや営業のツールに使えたり、BtoBのマッチングに寄与するような複雑なものまである。

 もちろん、紙媒体を使用しないネットであるからエコであり、コスト削減や在庫リスクの低減も図れる。

 「これ以外にも、ITギフトの大きな特徴としては、自在性が大きいことと、マーケティングに活用できる点があります」(正林所長)。

 自在性とは、贈る商品の品ぞろえに端的に示されている。WEBであればこそ、品数を増やしたり減らしたりするのは容易だ。そこに自社商品や取引会社の商品も加えることによって、販促に活用する手だてもある。

 「提示される商品が固定的な従来の一般的なカタログギフトに対し、WEBは柔軟であり、例えば『お酒の好きな人へ』とか『今回は故郷の名産品をお贈りします』などと商品選択の意図を伝えられるようになります。地方の特産品の販路拡大にも役立つでしょう。電子マネーやデジタルコンテンツのギフト利用拡大にもつながります」(正林所長)。

 正林所長も、あるITのギフトサービスを使いお中元やお歳暮を贈っているが、そこにはクライアントの商品や自社のサービスを加えているという。これを通じて、消費財を持つクライアント企業の販路拡大も図れ、自社商品やサービスの発信もできるわけである。要は、情報発信や情報収集機能もあるわけである。

 実はIT活用はギフト業者にとってもメリットは大きい。一連のオペレーションコストを抑え、品ぞろえに力を注いだりできるからだ。