2015年3月末の「電子帳簿保存法」の改正、および税制改正により、スキャナによる帳簿の保存要件が大幅に緩和された。これによって再び注目を集めているのが企業の業務を「ペーパーレス化」する取り組みだ。単に資源の節約だけでない、業務そのものの見直しや働き方の変革につながるソリューションまで、ペーパーレス化から見えてくる世界は奥深い。

業務効率化の
“最後の切り札”

 日本生産性本部が11月に発表した「日本の労働生産性の動向2016年版」によると、2015年度の日本の労働生産性はOECD加盟34カ国中21位(先進7カ国中最下位)で、加盟国平均を下回り、依然として低い水準が続いている。この労働生産性を上げる一つの方法として注目されているのが、「紙」を媒介にした情報共有や日常業務などのペーパーレス化だ。

「紙」を使えば、紙自体のコストはもちろん、印刷やホチキス止めなどの手間もなくすことができる。ただ、急に全て「紙ナシ」にするというのはなかなか難しい話。決裁用紙を各部署の承認担当者がハンコを押して確認する会社も少なくないだろう。だが、その習慣にもいよいよ変化が訪れようとしている。

スマホで撮影など
電子保存で完結できる

 今、政府は行政手続き上の処理を電子化する「電子政府」への移行を進めている。行政内部や行政と国民・事業者との間で書類ベース、対面ベースで行われている業務をオンライン化し、情報ネットワークを通じて各省庁横断的、国・地方一体的に情報を瞬時に共有・活用する政府を目指しているのだ。

 それと同時に、政府は経費精算や公文書の保存における紙の使用を削減する目的で施行された「電子帳簿保存法(e-文書法)」によって、企業のペーパーレス化を支援している。

 今回の改正で、ほぼ全ての文書に対してスキャンデータの保存が認められ、電子署名も不要になるなど、中小企業でも電子対応が容易となった(16年1月から適用開始)。とくに経費精算については、スマホで撮った領収書のデータも使用できるなど、利便性が高まっている。

 例えば経費精算の場合、領収書をスキャンし、システム上で申請すれば、各部署の承認担当者がシステム内ですぐに書類を確認できる。これまでのように決裁用紙を回すといった手間が省けるため、処理終了までの時間を大幅に短縮できるわけだ。文書の保管や検索が紙ベースよりもずっと楽になるのは言うまでもないだろう。

 こうした流れを受け、行政機関ではペーパーレス化が率先して行なわれている。

ソリューションも
次々と登場

 一方、一般企業の対応はまちまちの状況だが、経費精算システムや名刺の電子化など、さまざまなソリューションを安価に導入できるようになり、ペーパーレス化に意欲的な企業も増え始めた。

 ビジネスの現場では、スマートデバイスがペーパーレス化を後押ししている。クラウドアプリケーションを導入して社員間で情報を共有すれば、紙ベースの会議資料は不要になる。

 また次のページで紹介する、給与明細を電子化するサービスも、企業に浸透し始めている。もちろん、これも業務効率化のための有効策の一つだ。

 企業にとってペーパーレス化は、業務の大幅な効率化が期待できる“最後の切り札”となるかもしれない。実現できるかどうかは、経営者の理解と実行力にかかっている。さまざまなペーパーレスソリューションが登場してきた今こそ、経営者はリーダーシップを発揮して業務の効率化を推進すべきだ。ペーパーレス化に取り組む企業が増えれば、日本の労働生産性も上がっていくに違いない。