葬儀のとき祭壇に飾られる遺影写真、この分野で国内25%のトップシェアを誇っているのが広島市に本社を置くアスカネットだ。
遺影写真の通信出力事業を拡大する一方で、個人ユーザー向けのオリジナル写真集「マイブック」などを国内外で展開、写真・デジタル・インターネットの三つからなる新しい写真文化の創造を目指している。

アスカネット
福田幸雄
代表取締役(CEO)

  広島市にあるアスカネットのオペレーションセンター。ここで受注しているのは全国の葬儀社からネットを通じて送られてくる遺影写真の制作依頼。送られてきた写真はオペレーターの手で合成やレタッチなどを施され、あっという間に美しい遺影に仕上げられる。

「写真原版を拡大し、着せ替えを行ったときに、きわめて自然な感じで仕上げるには、粒子や質感を合わせたり、絵画的な表現など特殊なノウハウを必要とします。当社のオペレーターは厳しい社内検定をクリアし、常に最高レベルの技術を提供しています」

  と説明するのはアスカネット代表取締役(CEO)の福田幸雄氏。現在同社では、年間27万枚の遺影写真を受注。この分野ではシェア25%にも及ぶトップ企業である。

時代に先駆けたネットワークサービス

  もともとはファッションデザイナーを目指し、東京でブティック経営もしていた福田社長が故郷の広島に戻り「飛鳥写真館」を設立したのは1972年。主にブライダル写真の撮影に携わっていたが、コンピュータやデータ通信の知識、ISDNによる通信網の整備などを背景に、遺影写真の通信出力事業を思い立った。93年にリモートコントロールソフトを活用した写真出力のフルリモート化に成功、95年にアスカネットを立ち上げた。

「従来の遺影写真は、写真館に持ち込まれても、ハサミで遺影を切り取って着せ替え用の写真に張り付ける程度のもので、とてもお客様が満足できるものではなかった。なぜ人生最後の大切な遺影写真を美しく制作できないのか。ならばコンピュータを利用して、遺影写真の制作を本格的にやってみようと考えたのです」(福田社長)

遺影写真のデジタル画像処理を行っているオペレーションセンター(広島と幕張)。 1枚につき作業にかかる時間は20~30分、年間に約27万枚制作される

  そこで考案されたのが通信出力システム。簡単にいえば、葬儀社は遺族から預かった写真を端末機器の指定の場所に置くだけで、短時間に加工した写真を自動出力できる仕組みだ。写真はリモートコントロールによってスキャニングされ、オペレーションセンターでデータ取得後短時間で画像加工される。完成した遺影写真は再び葬儀社に送られ遠隔操作でプリントされる。インターネットという言葉もまだまだ浸透していなかった時代、通信網を利用したデジタルサービスの先駆け的なビジネスでもあった。

  オペレーターの職人的な技術とネットワークの融合。この前例のないビジネスモデルはたちまち全国に普及し、現在取引先の契約端末は約1600ヵ所に達している。