「7時間睡眠がいちばん良い」「短眠は寿命を縮める」……。こうした常識、はたして本当なのだろうか?20年以上睡眠専門医として活躍中の坪田聡氏は、「睡眠のよしあしは『時間』だけでは測れない」「睡眠は『時間』と『質』のかけ算で決まり、質を高めれば5時間でも健康的な毎日を過ごせる」と言う。
しかし、短時間の睡眠では、日中にだるさが残る我々にとっては信じられない話だ。どう「質」を上げればよいというのだろうか。
そこで、最新刊『朝5時起きが習慣になる「5時間快眠法」』が話題沸騰の坪田氏に、その具体策を教えてもらう。今回は、睡眠の質に大きく影響する「睡眠前の食事」について語ってもらった。

なぜ、寝る前の食事は<br />睡眠の「質」を極端に落とすのか?<br />ついつい食べてしまう夜食、忙しいときにやりがちな寝る前のドカ食い……その習慣、やはり見直すべきだった Photo:kazkuro-Fotolia.com

食べると眠くなる理由

なぜ、寝る前の食事は<br />睡眠の「質」を極端に落とすのか?<br />坪田聡(つぼた・さとる)
日本睡眠学会所属医師、医学博士。雨晴クリニック(富山県)副院長。睡眠専門医として、20年以上現場に立ち続ける。日本睡眠学会の他、日本スポーツ精神医学会、日本医師会、日本コーチ協会にも所属。ヘルスケア・コーチング研究会代表世話人も務める。1963年生まれ。石川県在住。日本を睡眠先進国にし、睡眠の質を向上させるための指導・普及に努める。2006年に生涯学習開発財団認定コーチの資格を取得し、「睡眠コーチング」を創始。2007年から生活総合情報サイト「All About」の睡眠ガイドとして、インターネット上で睡眠に関する情報を発信中。『脳も体も冴えわたる 1分仮眠法』(すばる舎)、『快眠★目覚めスッキリの習慣』(KADOKAWA)、『能力が5倍アップする 睡眠法』(宝島社)、『専門医が教える毎日ぐっすり眠れる5つの習慣』(三笠書房)など著書多数。

 私たちは、お腹がいっぱいになると眠くなる。それならば、寝る前に食事をとれば、すぐに眠りにつけるのでは……そう考える人もいるかもしれない。

 たしかに、お腹いっぱいになると眠くなるのは事実だ。満腹状態になると、「満腹ホルモン」と呼ばれるレプチンが分泌される。レプチンには催眠効果があり、お腹がいっぱいになると眠くなるのはこの作用によるものだ。

 しかし、レプチンの主な仕事は、睡眠に誘導することではない。レプチンの本業は、食べたものを消化するために胃腸を忙しく働かせること。その状態では脳や体は休まることはなく、睡眠に入っても浅い眠りにしかならない。

 睡眠は、「就寝後180分」が大切であることは、以前の記事でも述べたとおりだ。睡眠直前の食事は、この180分の質を大きく落とす。だから、眠る前に食事をとってはいけないのだ。

睡眠に影響しない夕食のとり方とは?

食事をとってから、胃腸の働きがひと段落するまで約3時間はかかる。夕食は、遅くとも就寝3時間前に済ませておくのがベスト。
 また、脂肪分の多い食事は、消化に時間がかかってしまう。夕食では、脂肪分の多い肉類や揚げ物は控えたほうが好ましい。どうしても小腹がすいてしまい、我慢ができない場合は、消化のいい食べ物をとるとよい。

 また、残業などで夜が遅く、夕飯を就寝3時間前以降にしかとれない人は、間食をうまく使おう。
 一度にドカ食いするのではなく、19時頃に一度、間食をはさみ、夜はスープなどの消化のよい軽めの食事をとるとよい。