料理のクリエーティビティや遊び心という面は男性の好奇心を刺激する。最近では、そんな料理の愉しみに目覚め、週末に厨房に立ち、調理する男性が増えている。今回は、料理の愉しみや知的な男性を満足させる話題の進化系食材や家電、調理器具をテーマに、山本益博氏に話をうかがった。

調理道具は、慣れると
代えがたい「相棒」になる

   男性が料理をするのは、絶対にお勧めです。仕事に通じているところがありますが、非常にクリエーティビティ溢れる行為です。フランスを代表する料理人ジョエル・ロブション氏が「料理とは頭で考えたことを手で表現すること」と言うように、頭で理解しているだけではダメ。腕が立っても発想力や段取りが組めなければそれはそれで成り立たない。

山本益博 Masuhiro Yamamoto 料理評論家。1948年東京・浅草生まれ。82年、『東京・味のグランプリ200』を講談社より出版し、「料理評論家」としてデビュー。以来、“美味しいものを食べるより、ものを美味しく食べる”をモットーに第一線で活躍中。著書に職人仕事の現役最高峰を紹介した『至福のすし「すきやばし次郎」の職人芸術』(新潮新書)、スポーツでは、大リーガー・イチローのノンフィクション・エッセイ『イチロー勝利への10ヵ条』(静山社文庫)など。

  毎日料理をしている女性とは違い既成概念にとらわれない発想で、料理に取り組めるのが男の料理の愉しさです。料理は女性の仕事と思っている方はもったいない。日常で、こんなに想像力をかきたてるおもしろい行為はそうありません。週末くらいはぜひ腕を振るってもらいたいものです。

  僕が料理を作るときには、店の方と言葉を交わして食材を買い求めます。すると店の方も張り合いが出るようで、少しいい部分、おもしろい部位などを出してくれたりします。

 そのコミュニケーションによって、出てくるものも変わるわけで、たまに買い物に行く男性だから、こういう愉しみ方もできるんです。一方、子どもに料理を作って一緒に食べるとなると、自然にコミュニケーションが深まります。たいしたことのない料理でも、その人のために作って、一緒に食べるというのがいいのだと思います。

  僕は食事には「団欒」が大切だと思っているんです。家族みんなで同じ時間に同じ料理を食べて「美味しいね」と言い合って互いに美味しさを分かち合い、楽しむ。食事は大切なコミュニケーションの一つです。休みには、お父さんがリードして「家族団欒」を復活させてほしいものです。

■使うたびに愉しくなる道具を選ぶ

  またよい調理道具を選べば料理が楽しくなり、腕も上がります。僕が職人仕事を取材して知ったのも、よい道具を選んで使いこなすことの大切さです。たとえば僕はもの書きなので、筆記具選びには労を惜しまない。そうして見つけた筆記具は自分の手の延長のようで毎日毎日、使うこと自体が愉しい。仕事もはかどるから手放せない。

  調理道具も同じです。使うのが愉しくてたまらないと思えるまで使ってみる。そうして慣れると、代えがたい相棒になります。多少高価でも十分そのお釣りもきます。たとえば、よいフライパンは自分のテクニックを補ってくれるからとても使いやすいし、長く使い込めば自然と愛着がわいてくるものです。

  僕は、調理道具を見るとつい欲しくなっていろいろと増えてしまうので、収納しやすいというのも欠かせないキーワードですね。

  近年は、料理の時間短縮へのニーズが顕著です。ですから、効率よく時間短縮と美味しさを両立させる便利な食材や道具も増えました。それらを味方につければ、ハードルが低くなって、料理がぐんと楽しくなりますよ。