初刊行から19年を数えるロングセラー『大学図鑑!』の2018年版発売を記念し、監修者オバタカズユキさんがみなさんから寄せられた“大学選び”の悩みについて、独断と偏見で答えちゃいます。初回は、首都大学と法政大学のいずれも経営学系に合格された姪御さんがどちらに行くべきか、というお悩みにお答えします!(なお、本連載での回答は、就職や夢の実現を保証するものではなく、一意見として参考にしてください。受験生ご本人、親御さん、ご親戚からのご質問をお待ちしております!)

Q 姪が受験で、首都大学東京(都市教養学部経営学系)と法政大学(経営学部)に合格しておりますが、どちらにすべきか悩んでいるようです。姪は自立心が強く、実家の経済状況も鑑みて親に負担をかけずにアルバイトで資金をためて留学したいと言っています。住まいは埼玉県南部で、首都大まではかなり離れています。将来は商社に就職したいそうですが、どちらの大学を薦めたらいいでしょうか。

首都大学と法政の経営学部なら<br />どっちに行くべき??留学して将来は商社で働きたい、というしっかり者の姪御さんだ

 まずは、おめでとうございます!

 昨今は、推薦やAO入試などの枠が広がり、そのぶん一般入試が親世代の当時よりも難しくなっている大学が多くあります。法政大学もその代表格のような存在です。相応に受験勉強を頑張ってやらないと、突破できません。だから、ぜひ「すごいね!」と御祝を言ってあげてください。

 とはいえ、ここから先は私の独断と偏見になりますが、2大学を比べた場合、集まってくる学生たちのボリュームゾーンは首都大が一段上です。そもそもの学力や、何事にも真面目に取り組む姿勢などにおいて、軍配は首都大にあがると思います。法政は大きな大学ですので、すごく優秀でやる気のある学生も少なからずいます。でも、トータルでの印象はけっこう違うのです。

 その印象を、まずは姪御さん本人に確かめてほしいところです。法政大学経営学部生が4年間通う市ケ谷キャンパス(東京都千代田区)と、首都大学東京都市教養学部経営学系の学生が4年間通う南大沢キャンパス(同八王子市)の両方をたっぷり観察してほしい。前者は典型的な都心のキャンパスであるのに対し、後者は典型的な郊外型キャンパスです。ぜんぜん雰囲気が違います。そこでキャンパスライフを送っている学生が醸し出す空気もだいぶ異なる。

 姪御さんご自身が、その違いを感じ取ってみて「こっちがいいな」と感じた大学に進んでもらうのが一番です。就職のことなんか、気にする必要はありません。

 商社というのは、総合商社をイメージされているのでしょう。法政にも首都大にも総合商社の就職実績はありますが、いずれもわずかであり、どちらが有利か比較するほどの人数はいないはずです。総合商社は、東大京大一橋東工大+早慶あたりの学生が内定を奪い合う人気就職先です。海外とつながりのある仕事に就きたいということであれば、総合商社以外に専門商社が数多くあるほか、海外取引の多いメーカーなどもたくさんあります。大学生活を送りながら視野を広げて探せばよく、現段階で迷う意味はほとんどありません。

「国公立」でも学費は初年度80万円以上かかる

 それにしても、ちょっと個人的に感慨深いというか、そこまで来ているかと思われるのは、<実家の経済状況を鑑みて>、私大と公立大で迷っているという点です。

 たしかに、私大と国公立大の学費の差は縮まりました。親世代の学生時代とは実態がまったく異なる。国公立大の学費がすごく上がったからです。結果、2017年度入学生の初年度納付金は下記のとおりで、年間の授業料を見てもわかるとおり、国公立であっても学費がとてもかかる昨今なのです。

・法政大学経営学部
:初年度納付金 121万6000円/年間授業料 78万8000円

・首都大学東京都市教養学部
:初年度納付金 80万2800円(都外の場合)/年間授業料 52万0800円

 つまり、裕福でないから国公立、という発想は通用しなくなっています。

 そこで、姪御さんは入学前からアルバイトを考えている。貯めて、留学資金にしようと思っている。

 しっかりした、根が真面目で意志も強い人なんですよ。そんな彼女なら、首都大がベターかな、と想像ですけど勝手に思ってしまいます。

 大学名が変わり、中身も大きく変わりましたが、首都大には今も苦学生が真面目に頑張る土壌というか、実直を良しとする校風がわずかながら残っています。法政もそういう大学でしたが、こちらは激変しました。いまやオシャレな大学と思って入学してくる学生も少なくないんです。イメージが本当に違うから、できれば姪御さんひとりでなく親子でキャンパス見学に行ってとお伝えください。

 懐事情が厳しめで、アルバイトをがっつりやりたいと思うなら、通学時間の無駄を省くことです。私が姪御さんだったら、首都大を選び、南大沢キャンパス内にある学生寮に入ります。

 入寮は最長2年間ですけれども、1人部屋が確保できて、月の支払いは使用料4700円+光熱費約6000円(通信費などは各自負担)と激安。1年次の募集に間に合わなかったら、入寮するまで大学になるべく近いシェアハウスに住むのも手です。とにかくお金と時間を無駄にしない。

 埼玉の南部にお住まいなら東京のさまざまな大学が通学圏内なので、最初から実家住まいを前提としているかもしれません。しかし、私個人の考えは、せっかく大学生になったのだから、それは親離れ、子離れのチャンスだよというものです。通学可能でも、親元を離れたほうがいい。自費での留学を考えているような姪御さんです。親がいいよと言えば、喜んで羽ばたいていくんじゃないですか。

 私でしたら、留学には、首都大の交換留学制度を狙うでしょう。いろいろな留学先が用意されていますが、「お得」なコースは、おそらく難関です。でも、能動的で真面目な姪御さんのようだから、そのくらいハードルを高く設定したほうがきっと燃える。

 法政にも様々な留学制度が設置されているし、市ケ谷キャンパスでは社会人と接する機会も多く、なかなか魅力的です。なので絶対に首都大がいいとは言い切れないんですけれども、市ケ谷だとたぶん自宅通学して当たり前の距離ですよね。それ、逆にもったいないなあ、と私は思います。

 大学選びでは、その人の価値観や人生観が出ます。以上は、私個人の価値観が多分に含まれています。こんな意見をぶつけてみて、姪御さんがどんな反応を示すか、ぜひとも知りたいところです。

 ☆ぜひ聞いてみたい質問がある場合は、zukan@diamond.co.jpまでお寄せください。質問採用の有無に関するご連絡は、本連載における公開回答をもって代えさせていただきます。