女性の活躍推進は日本の持続的な成長のために不可欠であり、政府の最重要課題の一つにもなっている。だがその実態はどうなのか。『女性の品格』の著者で昭和女子大学理事長の坂東眞理子氏と、女性人材育成の“カリスマ”朝倉千恵子氏が対談した。

 

──企業における女性活躍推進の現状をどう見ますか。

坂東 政府は旗を振るが現実が伴わない、というのが現状です。2015年の「女性活躍推進法」の成立で一歩は踏み出しましたが、16年に世界経済フォーラムが発表した男女平等ランキングで日本は144カ国中111位。政府は指導的地位に女性が占める割合を20年までに30%にするという目標を掲げていますが、現在まだ10%を超えた辺り。育児休業など制度は整ってきましたが、企業はまだ本気で経営戦略に組み込んでいません。

優秀な人材を求めるならば
女性の選択肢は外せない

富山県出身。東京大学卒業後、1969年総理府入省。95年埼玉県副知事、98年ブリスベン総領事、2001年内閣府男女共同参画局長。04年昭和女子大学・女性文化研究所長、07年同大学学長、14年理事長、16年総長(理事長兼務)現在に至る。『女性の品格』(06年)は累計300万部を超えるベストセラー。

朝倉 私は企業研修という形で多くの企業を内側から見ていますが、結論から言えば「働いている女性を見ればその企業のレベルが分かる」。成長している企業は、おしなべて男女関係なく与えられたフィールドで活躍しています。女性は順応性と対応力に優れているので、厳しい環境に身を置けば、男性と同じように仕事はできます。ただしその機会がなかなか与えられない。与えられないと能力は退化してしまいます。

坂東 私はよく日本の企業には、女性に対して三つの「き」がないと言っています。「機会」を与えず、「期待」せず、「鍛え」ない、の三つです。高スペックの女性ほど、チャンスが与えられず、足踏みをさせられると辞めてしまう。家庭との両立が課題ではなく、将来が見えないことが問題なのです。今後は少子高齢化が進み、人材の確保がますます困難になっていきます。優秀な人材を求める上で、男女の区別はもう時代遅れだと思います。