住宅を購入する際、大切なことはその街を知ることだ。「不動産は街で買え」という格言もあるが、街の顔である鉄道駅の連なりである路線に焦点を当て、その「不動産力」を初めて評価してみた。対象としたのは首都圏・関西圏・中京圏の三大都市圏を走る鉄道路線で、本線から延びる枝線や分岐線は本線と合わせた。その94の路線をランキングしたのが記事中の表である。上位には首都圏都心部を走る路線が名を連ねている。

上位を地下鉄や都心部のJR各線が占める中、郊外と結ぶ私鉄では最上位にランクされたのが東急東横線。東京メトロ副都心線との相互乗り入れで各社の車両が路線内に入り乱れているが、これは東急の車両 写真提供:郷田恒雄

「不動産力」を構成する
2つの力と8つの項目

 不動産の価値は端的には地価に反映されている。しかし、それだけではその街(駅)の将来性も含めた姿を知るには十分ではないかもしれない。

 そこで、沿線住民の属性や人の移動に伴う新陳代謝などを反映した「住民力」、土地の持つ力と合わせて「不動産力」を算出した。「住民力」と「土地力」の配点は40対60となっている。

 「住民力」は4つのデータで弾き出した。まず、住民の平均世帯年収を示す「世帯収入」が挙げられる。ついで、大学卒業者数の人口に占める割合を示す「学歴」である。この2つで住民の基本的な属性を見た。

 次に、街の新陳代謝を反映する世帯数の増減率「世帯増」、そして、働き盛りで子育て世代でもある30~40歳代の人口の占める割合「労働力」により、住民の勢いを見た。4項目いずれも10点ずつ配点した。

 「土地力」も4つのデータで見ている。「地価」(基準地価)には25点を配点して重きを置いた。地価の分布は13万~630万円/平方メートルと、路線間格差は実に50倍近い。そこで、基準地価の増減率「地価増」にも15点を配点することで土地の勢いを反映した。

 この他、収益性を測るデータとして「賃貸料」(25平方メートル換算での賃貸料)を、不動産の流動性を見る指標として「中古」(中古マンションの売り出し件数の増減率)をそれぞれ10点ずつ配点することで、地価水準以外の要素も加味した「土地力」を探っている。

 次のページには「不動産力」全体ランキングを掲載しているが、94路線の合計得点平均は100点満点で42.15点(住民力20.5点、土地力21.65点)だった。

 まずは、東京23区を中心としたランキングから見ていこう。