全米で話題沸騰中の21の睡眠メソッドを集約した、『SLEEP 最高の脳と身体をつくる睡眠の技術』。本連載では同書の中心的なメソッドを紹介していきます。食事、ベッド、寝る姿勢、パジャマ――。どんな疲れも超回復し、脳のパフォーマンスを最大化する「睡眠の技術」に注目です!

睡眠の質を最大化する「最強のパジャマ」はコレだ

睡眠の質は体温調節と深い関係がある

ただ寝るだけのためにわざわざ着替える人が大半を占めるのだから、人間は特異な生き物だ。ベッドに入るときの衣装であるパジャマは、「快適」の代名詞の一つだとも言える。

「パジャマ」と口にして、心地よい気分にならない人はたぶんいないだろう。パジャマを着るという行為は、一日の終わりにほっとした気分を実感するきっかけとなってくれる。別の言い方をすれば、家の外に出るための服を脱いで、一息ついてくつろいだ気分になれる服に着替えるということだ。パジャマは親しい友人や家族の前でしか着ない服だが(パジャマパーティに参加するなら別だが)、それと同時に、睡眠の質を左右する服でもある。

睡眠の質には体温調節が大きく関係する不眠症のなかには、体温調節の制御がうまくできず、睡眠の深い段階に入れるまで体温を下げられないことが関係しているケースもあるという。実は、私たちの身体は熱を保つことは得意だが、身体を冷やすことはあまり得意ではない。だから、寝るときにゆったりしたデザインの服を少ない枚数着るほうが、体温調節がしやすくなる。

オランダの研究機関で、被験者にサーモスーツを着せて表面温度を1度に保った状態(体深部の温度に変化はない)が睡眠に与える影響を調べる実験が行われた。すると、被験者が夜中に目を覚ます回数が減り、深い睡眠である段階の眠りの時間が増大したという。

寝るときに何を着ようが関係ないと思っている人は、いますぐ考えを改めてもらいたい。といっても、よく眠れるようになるためにつま先を氷のように冷たくしろという意味ではない。寝るときにイヌイットのようにたくさん着込んでいるなら、何枚か減らすことを考えたほうがいいという意味だ。

家にエアコンが完備されている人は、この世界で暮らす何十億という人よりも幸運だ。だからといって部屋を暖めすぎると、睡眠を適切な時間とったとしても、目覚めたときに疲れが抜けていないと感じるかもしれない。7枚の上掛けに電気毛布を使い、狩りに出かけるような格好で寝れば、身体の回復をいちばん高める段階の睡眠があまり得られないことになるかもしれない。

身体を締め付けないパジャマを選ぼう

寝るときに着る服のデザインや着心地は、ほかのどんなときに着る服よりも重要だ。ぴっちりとした動きづらい服を着て寝るのは、絶対に避けたほうがいい。締めつけの強い服は、リンパ系の流れを実際に遮断する恐れがある。リンパ系は体内の細胞から排出される「老廃物」の管理を担うほか、免疫系でも重要な役割を果たす。体内全体に循環するリンパ液の量は、血液の4倍以上にもなる。

リンパ系の流れが服の締めつけによって遮断されると、細胞外液が体内のあちこちにたまりだす。そして、最悪なことが起こり始める。

この種の例で真っ先に思い浮かぶのが靴下だ。靴下を脱いだときにくっきりと跡が残っていれば、締めつけがきつすぎたと気づく。わかりやすいと言えばわかりやすいが、跡が残るのは問題だ。

私たちの身体は、リンパ系を通じて有害物質を体外に出す。その流れを何らかの形で遮れば、ホースが曲がったみたいに流れが止まる。流れが止まれば液圧が膨張するので、リンパ液の循環が乱れたり、もっとひどいことが起きたりする。

寝室を涼しく保つことを推奨しつつ、冷え性の人には暖かい靴下をはくようにとアドバイスしたい。眠っているときに足首が締めつけられるのを何とかしたいという人は、締めつけのゆるい靴下に替えれば解決する。アウトドア用の靴下には締めつけのゆるいタイプがいろいろあるので、そこから探してみるといい。

ベッドに入るときは、動きを一切制限しない、低刺激の素材でできた服を着るのがいちばんだ(素材が低刺激であると同時に、洗濯洗剤も低刺激のものを使ってほしい)。動きを一切制限しない服といっても、シーツの真ん中に穴を開けて頭を通すようなダボダボの寝間着である必要はない。着心地がよくて動きやすければそれでいい。そういう服は、探せばいくらでもある。男性と女性の場合で、寝るのに適した服装の基本を紹介しよう。

これがベストのパジャマだ(男性編・女性編)

・男性のベストなパジャマ
トランクス、ゆったりしたパジャマズボン、ジャージなど。上も着たい人はごく一般的なTシャツ。裸でもよい

・女性のベストなパジャマ
ボーイズタイプのショーツ、自分もしくはパートナーのTシャツとトランクス、ゆったりしたスリップやナイトウェア・ランジェリー、ヨガパンツ、足やお尻を締めつけないタイプのレギンス、ゆったりしたパジャマズボン。裸でもよい

・ベストな下着
1991年にハーバード大学で実施された調査から、ブラジャーをつけない女性が乳ガンを発症するリスクは、ブラジャーを常時着用する女性の半分であることが明らかになった。寝るときは、ブラジャーから解放される絶好のチャンスだととらえよう。それが健康増進につながり、ブラジャーをつけていないと落ち着かない依存状態から抜けだす大きな一歩となる。男性は、睾丸を締めつけるような下着で寝るのは避けたほうがいい。締めつけの強い下着を着ていれば、大事な部分を過剰に温めすぎることになり、正常な温度で拡張や収縮ができなくなる。寝るときは、締めつけない下着をつけるか、何も着ないのがいちばんだ。

・見た目よりも着心地
服を買うときは、その服を着ることで細胞にかかる(かからない)負荷をつねに意識しよう。人体がもつ本来の機能を尊重しつつ、オシャレに見える服や靴を作っているメーカーはたくさんある(高級ブランドのなかにもある)。