アベノミクス開始以降、不動産投資を始める人が急増した。その結果、物件数が減り価格は上昇、相対的に利回りが低下しているという。「それでも探せばいい物件があり、効率よく収益を上げる選択肢もある」と言う不動産コンサルタントの浅井佐知子氏に話を聞いた。

たくさん動いて情報収集
優良物件を見逃さない

浅井佐知子 Sachiko Asai
浅井佐知子不動産鑑定事務所代表。不動産会社で主に法人営業(土地活用)を経験した後に独立。「不動産鑑定士の資格を持つ不動産コンサルタント」として、1000件以上の鑑定評価書を書き、不動産投資や土地活用など5000件以上のコンサルを手掛ける。著書に『世界一やさしい 不動産投資の教科書 1年生』(ソーテック社)がある。

 「不動産投資を行っている方の属性は、大きく二極化しています。一方は、安定した老後の生活のために初めて不動産投資にチャレンジするビジネスマン層、もう一方は、資産運用や相続税対策を考える土地・建物のオーナー層です。効率よく収益を上げるためには、それぞれの目的にかなう物件や商品を選択することが不可欠です」(浅井佐知子氏。以下、同じ)

 結婚・出産年齢が遅くなっている今、定年近くになっても子どもの学費などでお金がかかり、自分たちの老後の蓄えにまで手が回らないケースが増えている。そこで現役のうちに手を打っておこうというビジネスマンが、前者には圧倒的に多いという。

「不動産投資初心者には小さめの物件から始めることをお勧めしています。管理が簡単な点からも、区分所有マンションで賃料を得る方法がいいのでは」

 超低金利や相続税強化の政策下において、投資対象としての不動産の優位性は明らか。一方で、不動産投資熱が高まり、物件数が減って価格が上昇、利回りが低下しているのも現実だ。

「それでも、探せばいい物件はあります。コツは、たくさん行動すること。毎日10分でいいから投資物件サイトを必ずチェックする、問い合わせを機に不動産業者と仲良くなるなど、常にアンテナを張って情報収集し、実際に動いてみることです」

 「いい物件をいかに相場より安く買うか」が投資の基本。年に数回程度だが、業者が物件を回すために損切り覚悟で入札物件を出すこともあるという。そうした「いい物件が出るのを待てる人になる」ことが成功への第一歩だと、浅井氏。また、初めから売却益を狙うのはプロの投資家でも難しいので、安定した賃料収入が取れる物件を探した方が無難だという。

 「逆に、絶対にやってはいけないのは、無料の不動産投資セミナーに参加して、その場で投資用マンションを購入したり、物件を見もしないで買うこと。これで失敗している方が多いのです。必ず現地に足を運び、地元の不動産業者を最低3軒は回って、周辺の賃料相場や入居者需要を自分で確かめてください」