外科手術の何といって、切り開いた手術創(キズ)が回復するまでの期間ほどつらいものはない。ましてみぞおちから臍まで15~20センチメートルは切る開腹手術のような大手術ならば組織や皮膚がくっつくまで痛みはもちろん、感染症の危険に曝される。このため、昨今は内視鏡や腹腔鏡を使った身体への負担が少ない「低侵襲」の手術が普及してきた。

 ただ、腹腔鏡術といえども、カメラや鉗子を挿入する孔を複数穿つ必要がある。となれば完全を追求しないではいられないのが人間というもの。2004年、米国から「お腹の壁をいっさい切らない」という究極の低侵襲手術法「NOTES」が報告された。コレがなんと「口や膣、肛門など人間が自然に持っている孔を経由して、内視鏡をお腹の中に挿入する」(消化器内科医)という方法なのだ。一瞬、なるほど! と膝を打ちたくなるが「待てよ」とも思う。それでは胃食道内部や腸管内のポリープくらいしか切り取れないのではないか。ところが、違うのだ。