日本は経済成長が頭打ちとはいえ、いまだ世界第3位の経済大国である。ただし自殺者は非常に多く、“幸せ”とは言えない状況だ。幸せとは一体何か? 幸せを実感するには、自分の目的や利便を「追求」するのでなく、あえて「引く」――欲望や期待がうずまく自分の「心」をコントロールする必要がある。そして恵まれた現状を正しく認識し、好きなことや貢献することに注力すれば、改めて生きる意味も見えてくる。

自殺者は毎年3万人以上
金持ちだけど不幸な日本人

 「腐っても鯛」だ。少々冴えないとはいえ、日本は今もGDP世界第三位の経済大国である。

 にもかかわらず、今の日本では閉塞感が漂い、幸福感も薄まっている。

 日本は幸せな国なのか? 果たして経済力と幸せは連動するのだろうか?

 それを検証するために、縦軸に経済力(1人当たりGDP)、横軸に幸福度(10万人あたり自殺者数)をとって先進20ヵ国の位置づけを示してみた。幸福度を自殺率でみるのは強引かもしれないが、「あなた幸福ですか?」みたいなアンケートよりは明確だし比較上、公平だ(図)。

“引く”ことで浮かび上がるもの<br />21世紀型 幸福の新方程式<br />図 経済力と幸福度の国別相関関係

 上図をみるとわかるように、メキシコやブラジルは、お金はないが自殺も少ない「貧乏だけど幸せ」な国。これは印象どおり。

 暗いイメージのあるロシアは、1人当たりのGDPは高くなく、幸福度も高くない(自殺も多い)国。

 ヨーロッパの多くの国は、予想通り、いわゆる「幸せなお金持ち」ということになる。

 ところが日本は、「金はあるが、幸福ではない」というポジションにある。

 日本では、毎年3万人を超える人が自殺の道を選ぶ。もちろん自殺率=不幸、という単純な公式は成り立たないし、日本特有の“ハラキリ”文化も背景にはあるだろう。だがそうはいっても、この相対的な自殺率の高さは、現在の日本人の幸福度がそれほど高くないことを表しているといえないか。