宅配水の利用者が急増している。大容量タンクに入った水を、サーバーと呼ばれる専用機に設置して冷水と温水を得る宅配水には、東日本大震災と原発事故からくる水への不安からも、期待が高まっている。

 古来、山国ゆえに良質の水に恵まれ、「水を買う」という考え方のなかった日本で、水を買って飲む“慣行”が生まれ始めたのは、昭和の終わりから平成にかけてのことだった。それまでは、ウィスキーの水割りに使うものというイメージが強かったミネラルウォーターを、日常的な飲料水とする人が出始めたのである。

 1990年代に入ると、マンションの貯水タンクの汚れが社会問題化。94年には国産の小容量ペットボトル製品の販売が解禁され、さらに2000年問題を契機とした備蓄ブームなどにより、ミネラルウォーターの消費量は急激に増加した。さらに健康志向の高まりを背景に市場の拡大が続き、日本ミネラルウォーター協会の調べによる
と、09年には250万キロリットルという市場規模になった。これは00年に比べれば2.3倍という増加ぶりだ。

 毎年、水製品関連の市場規模を調査している矢野経済研究所によれば、10年度
のミネラルウォーターの市場規模は、2200億円と予測されている(10年3月現在)。

 

2000年初頭から立ち上がり始めた
宅配水ビジネス

 その一方で、04年頃から顕著な増加傾向を見せ始めていたのが、宅配水事業である。

 宅配水といっても、単にペットボトルに入った水を配送するのではない。かつて米国の事業として紹介された際には「ガロンウォータービジネス」と呼ばれたように、大容量の水が入ったタンクを、専用のサーバーに設置して利用する。現在、日本でのタンク容量は、5ガロン(約18.9リットル)や12リットルなどさまざまだが、それを常に冷水と温水の両方で供給できるサーバーに設置して利用するのが宅配水だ。ボトルウォータービジネスと呼ばれたりもする。