各地でオフィスビルの建て替えや再開発が急速に進んでいる。エリアの新たなランドマークとなる高機能ビルには、ある共通した傾向がある。

 東京23区の大規模オフィスビル(オフィス延べ床面積1万平方メートル以上)の供給量は、2018年から大幅に増加し20年にピークを迎える(森トラスト「東京23区の大規模オフィスビル供給量調査’17」)。特に都心3区(千代田・中央・港)では10万平方メートル以上の超大規模ビルの建設が続く。

 日本ビルヂング協会連合会の岡本光生・事務局次長は「単体での建て替えの他、複数の既存ビルを一体で建て替える再開発プロジェクトが目立ち、延べ床面積の大規模化が顕著になっている」と言う。八木沢徹・事務局次長は「業務全体をワンフロアに集めるニーズが高く、1フロアが大規模化している」とも語る。フロア移動をなくして業務効率を高め、従業員のリアルコミュニケーションを重視する企業が増えているというのだ。

複合化と
環境性能向上

 そうした新たな大規模オフィスビルには、共通した傾向がある。都市再生特別地区や特例容積率制度の適用を受けるために、地域に貢献する文化施設や商業施設を併設した「複合化」だ。外部の訪問者も増えるため、巨大地震に備えたエリアの防災拠点の役割も担っている。

 省エネ・省CO2といった環境性能の向上も顕著だが「環境認証の取得は遅れている」語るのは金子衛・参事役だ。オフィスビルの環境説明として「CASBEE(建築環境総合性能評価システム)Sランク相当」という表現がある。Sランクは最上級クラスだが、認証を取得していない自主評価故に「相当」が付く。「費用をかけてまで認証を取ることが、ビルの差別化に直結しない」(金子参事役)ためで、ニーズはいまだに立地やBCP機能にあるという、皮肉な現状も見えてくる。

共用部の付加価値

 「働き方改革に対応している」(八木沢次長)点も見逃せない。会議室やカフェなどのサポート機能を入居企業だけが使える共有部に求め、オフィスは1人当たりのスペースを拡大させて、より創造的な仕事ができる空間にする。共用部の「プレミアム」化も進んでいるようだ。

 今、オフィスビルにはハードとしての高機能だけでなく、生産性の高さを実現するためのソフトの高機能が求められている。