今年の6月29日に公表された国勢調査(2010年、抽出速報集計結果)の内容は、衝撃的だった。初めて「単独世帯(一人暮らし)」(31.2%)が全体の3割を超え、「夫婦と子供から成る世帯」(28.7%)を上回ったのである。次が「夫婦のみの世帯」(19.6%)であり、「ひとり親と子供から成る世帯」(8.8%)がこれに続いている。「単独世帯」と「ひとり親世帯」の合計は、実に4割に達しているのだ。

 このような世帯構成の急激な変化は、わが国の住宅政策にも大きな影響を与えずにはすまされないだろう。

戦後の住宅政策、すなわち「持ち家政策」は
高度成長が前提

 わが国の戦後の高度成長は、言い換えれば、産業構造の変化に伴う急激な都市化によってもたらされたものである。その結果生じた、都市における大量の住宅不足は、まず公共住宅の供給によって、次に税制優遇や(旧)住宅金融公庫の低金利融資などを通じた「持ち家政策」の展開によって徐々に解消されていった。

 持ち家政策のモデルは、郊外の庭付き一戸建住宅であり、当時の標準であった「夫婦と子供二人」世帯を強く意識したものであった(1960年の1世帯当たり人員は4.14人)。庭で子供が伸び伸びと遊べるという訳である。

 とりわけ、フラット35という言葉が今でも生きているように、公的な超長期の住宅ローンを梃として頭金がほとんどなくても住宅が取得できるような制度を実現したことは、持ち家政策を存分に促進することになった。

 通常、最長35年の住宅ローンともなれば、支払いを終える頃にはほとんどの人が定年を迎えている。しかもようやく自分の物になった住宅は、(特に木造なら)35年も経てばかなり陳腐化しており、市場価値は恐らくゼロに近いであろう。