働き方改革は第二章の「人づくり革命」へ

「時短」から始まった働き方改革は、ここにきて生産性向上が主要なテーマとなってきている。仕事量が同じなまま、働く時間を減らしたところで、どこかにしわ寄せがくる。自宅に持ち帰るか、スタバでやるか。働き方改革とは、そもそも仕事の効率を高めることが本質であると気づいたからにほかならない。

 では、生産性向上のために何をすべきなのか。そもそも仕事とは、最少のインプットで、最大の価値を作り出すことにある。できるだけ少ない労力と時間、最も効率の良い手段、プロセスで、結果として最も安価な費用で、多くの価値(=目的の達成)を実現することである。生産性とは、いかに効率良く、価値を実現するか、その度合いのことで、「生産性=提供価値/投入資源」という図式になる。

 仕事の効率化には、仕事のしかたや仕組み、流れを変える業務改善もさることながら、働く人の質を高める必要もある。そこで、解散前の安倍内閣が掲げた「人づくり革命」が登場してくるのだ。人材教育、社会人になってからの学び直し、リカレント教育の重要性が叫ばれている。人材教育に対する、さまざまな助成、税控除などいろいろな施策が検討され始めていた。

 AIの進展も人材教育に拍車をかけている。2045年、コンピューターが人間の能力を超える技術的特異点、「シンギュラリティ」がくると言われる。ある研究によると、現在人間が行っている仕事の4割がAIに置き換わるとの調査もある。AIに指示されて仕事をすることが現実となるかもしれない。人間はAIに使われる人になるのか、AIを使う人になるのか。大きな分岐点が目前に迫っている。

 人材教育の機会が増えたとしても、結局、その教育を受けるのは、個々の人である。その人の意欲が高まらないと、参加したとしても身に付かない。仕事で疲弊した状態では身に付くはずもないし、心身に不調をきたしていては、そもそもやる気も起きるはずがない。先に記した業務改善にしても同様だ。働き方改革と心身ともに健康な状態の維持を目的とした健康経営は、コイン裏表の関係にあるのだ。