MICEにおける日本のプレゼンスを高めるために必要なのは何か? 新理事長に就任した松山良一氏に聞いた。

松山良一
日本政府観光局(JNTO)理事長
1972年3月東京大学経済学部卒業、同年4月三井物産株式会社入社、イタリア三井物産社長、広報室長、米国三井物産副社長を経て、05年4月三井物産九州支社長。08年6月駐ボツワナ日本国特命全権大使。今年10月1日にJNTOの理事長に就任。

──今、MICEが期待されている理由は?

 やはり地域の活性化を含めて経済波及効果が大きいこと、国際相互理解のためにも重要だと考えている。また国際会議の場合、数年単位のスケジュールで動くため直前の景気に左右されないというメリットもある。経済波及効果については今年、JNTOで「国際会議の経済波及効果調査」を実施し、実際に効果が大きいことが証明されている。

──東日本大震災の影響は?

 直後には中止や延期などが相次いだが、観光地の現状や震災復興に向けた取り組みなどについて、正確な情報発信を継続してきたことが奏功し、状況は好転している。

 誘致が危ぶまれた大型のコンベンション、ライオンズクラブ国際大会(2016年・福岡)や、アジア・オセアニア地球科学会(14年・札幌)も無事に開催が決定した。危機感はあったが、ぜひ日本で開催をという熱意が通じた結果だろう。

日本の優れた観光資源や
人的資源を生かすべき

──誘致の競争が激化するなかで、日本がプレゼンスを維持するためには?

 1990年代はアジアにおいては日本の独壇場だったが、シンガポールや豪州、韓国、中国などが急速に力を入れ始めている。今後は積極的なプロモーション活動が必要になる。

 もともと日本には優れた観光資源があり、海外に評価の高い「おもてなしの心」がある。英国有力紙「ガーディアン」の11年観光地ランキングでは日本と東京が第1位ダブル受賞、米国大手旅行雑誌の読者人気投票では京都が11年アジア都市部門で初の第1位になるなど、評価はむしろ躍進している。また日本には学会や産業界のキーパーソンが多く、そうした人的資源も有効に活用しながら国際会議の誘致に結び付けていきたい。

──新理事長としての抱負は?

 大規模な国際会議場などのインフラ整備も必要だが、小規模でも質の高いMICEの誘致が重要だ。そのためには伝統に裏付けされた“クール・ジャパン”のような新しいブランドイメージを発信していく必要があると思う。

  また規制緩和や助成金など、MICE振興には国を挙げて取り組むのが前提となる。今後はやるべきことに優先順位を付け、部分最適ではなく全体最適を考えながら、観光庁とともに地方や民間と連携しMICE振興に取り組んでいきたい。