『あしたの履歴書』の共著者・田中道昭氏は、立教大学ビジネススクールの教授として日々教壇に立ち続ける一方で、定期的にアメリカで最新のアクティブ・ラーニングの手法を学ぶなど、自らのインプットにも貪欲に取り組んでいる。『あしたの履歴書』に採用している、そうした最先端のメソッドや手法について教えてもらった。

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「あしたの履歴書」は
目標設定のためのツール

田中道昭(たなか・みちあき)
立教大学ビジネススクール教授

シカゴ大学経営大学院MBA。専門は企業ストラテジー&マーケティング、リーダーシップ。大学で教鞭を執る一方で、企業の社外取締役や経営コンサルティングも務める。近著に『アマゾンが描く2022年の世界――すべての業界を震撼させる「ベゾスの大戦略」』(PHP研究所)がある。

 大学教授という仕事柄、20代、30代の若い世代の方たちと接する機会も多いのですが、彼らと話をしていて痛切に感じるのは、現代は明確な目標をもって生きることが難しい時代である、ということです。

 社会は閉塞感に満ち、明るい未来のイメージがなかなか描けない。目標をもとうと思っても、メンタルブロックがかかってしまい、目先の目標を立てることはできても、何十年後という遠い未来までは想像ができない。

 結果、目の前の仕事に追われるように働き、仕事にやりがいや充実感を抱くことができず、「自分は何のために働いているんだろう?」という壁にぶつかってしまう。キャリアデザイン論における、いわゆる「川下り(ドリフト)」状態に陥ってしまうのです。

 そんな「流れに身を任せるだけの働き方」から「自ら目標を定め、その目標に向かっていく働き方」へと、特に若いビジネスパーソンの方々に自己改革していただくために執筆したのが、この『あしたの履歴書』です。

成長企業が組織づくりの
中核にする「OKR」とは?

 本書のコンセプトは、サブタイトルのとおり、「目標をもつ勇気は、進化する力となる」です。つまり、キャリア上の目標設定をしていただき、仕事への意識や働き方を変革し、自らの市場価値を自らの手で高め、設定した目標を実現していただくことです。

 現代のビジネスパーソンにとって、「目標」の有無やその内容は極めて重要です。

 本書のなかでも触れていますが、近年大きな業績をあげている企業――日本ではメルカリ、アメリカではグーグルをはじめとしたシリコンバレーの最先端企業――では、組織づくりの中核に目標管理制度兼人事評価制度「OKR(Objective and Key Results/目標と主な結果)」を導入しています。

 OKRを年4回実施し、「目標の設定→実行→評価→改善」というPDCAサイクルをまわしていくと、急激なスピードで成長していくことができます。「あしたの履歴書」のプログラムは、このOKRのコンセプトをさらに進化させてつくり上げています。

動機づけの源泉となる
5つの要素

 また、日々大学のビジネススクールの教壇に立つなかで私が感じているのは、人によって動機づけの要因がさまざまであるということです。

 そこでビジネススクールで活用し、「あしたの履歴書」にも取り入れているのが、米国心理学会の元会長でポジティブ心理学の第一人者であるマーティン・セリグマン教授の「PERMA」という手法です。

 PERMEとは、
P…「Positive Emotion(ポジティブな感情)」
E…「Engagement(エンゲージメント、没頭)」
R…「Relation(人と人との関係)」
M…「Meaning(意味や意義)」
A…「Accomplishment(目標の達成)」
 
 のことで、人が行動を起こすときの動機づけの源泉になる要素を示しています。

「あしたの履歴書」は、PERMAの5つの要素をバランスよく高めていくことで、目標をもち、それを実現するための行動が起こせるように働きかけていきます。

「あしたの履歴書」では、3年後という近い未来の目標設定とともに、30年後という遠い未来の目標設定もしていただきます。30年先までの自分のキャリアを具体的かつリアルにイメージしていただくことで、実は〝いま、ここ〟にある仕事への意識や取り組み方が劇的に変わるのです。

 いま、目の前にある仕事にワクワク感ややりがいを感じるためにも、ぜひ「あしたの履歴書」を活用していただきたいと思います。