Q リタイア後は海外で暮らしたい。年金の受取りはどうしたらいいですか?

★相談者
東京都在住のサラリーマン齋藤さん(55歳)
妻と2人暮らしで、定年まであと5年。海外駐在していたタイにコンドミニアムを購入しており、定年後はタイを拠点にして海外での生活を希望している。

◎回答者
望月厚子さん 
社会保険労務士、FP。年金の実務に富み、講演などで活躍。成年後見人としても活動中。

住民票は日本に置いておいたほうが手続きは簡単にできる

 5年後に定年を迎える齋藤さんの夢は海外移住。

 「雇用継続で会社に残ることもできますが、定年後は思い切って仕事を辞めようかと。海外赴任で暮らしたタイは気候もいいし、物価も安い。向こうにコンドミニアムもあるので、元気なうちは妻とタイで暮らしたいと思います」

 社会保険労務士の望月さんは、「25年以上加入していれば、海外に移住しても年金を受け取れます。ただし、完全に移住してしまうと手続きは少々面倒です」という。

 完全に海外に移住する場合は、
(1)市区町村に海外への転出届を提出、(2)「年金の支払を受ける者に関する事項」という書類に海外の住所、受け取り金融機関などを記入し、日本年金機構業務センターに送付、(3)手続き後は年1回届く「現況届」を忘れずに提出する、といった手続きが必要になる。

 「1年未満の滞在の場合は海外転出届が不要です。いずれ日本に戻る予定なら、住民票を置いておくほうが無難。ただし、この場合も年1回の現況届(※)の提出だけは忘れないようにしてください」

 日本に住所がある場合は、国民健康保険、介護保険の加入も忘れずに手続きを。

※ただし、日本年金機構に住民票コードの届出をしていれば、原則現況届の提出は不要。

リタイア後は海外で暮らしたい。年金の受取りはどうしたらいいですか?

▼社会保障協定を結んだ国なら赴任先の年金ももらえる!

 米国、ドイツなど2国間で社会保障協定を結んだ国に赴任した場合、日本または外国の社会保険制度のいずれかに加入すればよく、日本と外国の制度の加入期間を通算できる。

[米国の年金制度から老齢年金を受け取れる条件]
(1)米国の年金に1年6ヵ月以上加入
(2)日本の年金加入期間と合算して10年以上


(文/早川幸子、イラスト/南後卓矢)


*ダイヤモンド・ザイ2012年2月号に掲載。第1特集は「お金の秘策100!」。株式投資や投信、預貯金、保険、年金、節税、ローン、FXなど上記以外に99の「秘策」を掲載。その他、高利回りの金融商品のランキングベスト35も。