東日本大震災の被害に加え、欧州危機や超円高などがわが国の輸出産業に大打撃を与えている。震災復興、経済対策が強く求められるものの、その財源も乏しく明るい材料は少ない。2012年の政策、そして住宅市場への影響はどうなるのか。住宅情報サイトを運営するホームアドバイザーの井端純一社長に聞いた。

――12年度の景気対策は、震災の影響を受け、従来に比して復興支援という色合いが濃い。

いばた・じゅんいち/同志社大学文学部新聞学(現メディア学)専攻卒。リクルートを経て、『週刊CHINTAI』『ZAGAT』取締役編集長などを歴任。2003年、ホームアドバイザーを設立。新築物件・土地専門サイト「新築オウチーノ」、中古物件専門サイト「中古オウチーノ」、リフォーム業者入札サイト「リフォーム・オウチーノ」、建築家マッチングサイト「建築家オウチーノ」、賃貸物件専門サイト「キャリルーノ」などを運営。著書に『広報・PR・パブリシティ』(電通刊)などがある。

 11年秋、経団連の米倉弘昌会長が震災の復興財源に対し、「企業も協力するべきだ」と発言している。11年度の税制改正で合意された法人税減税を一時棚上げしても構わないとの趣旨だ。震災復興は国家の最重要問題。官民挙げて取り組むべきで、この考えには同意したい。

 しかし、日本の法人税は諸外国と比べて高い。外資系企業を積極的に誘致し、雇用を創出する――長い目で見ればそのほうが歳入増につながる。ただでさえ超円高で輸出企業が打撃を受けているのに、実質上の増税となれば、企業は疲弊し、私たちの生活はさらに圧迫されることになるだろう。

 被災地では著名人が炊き出しなど被災地支援を行っている。一人ひとりが自分にできることをやっていくのが大切だ。国も、税金を取りやすいところから取るのではなく、公平に負担させる配慮が必要だと思う。学校や宗教法人など公益法人は税制上、優遇されているわけだが、復興のための時限立法であれ、彼らにも負担してもらうことを検討してもよいのではないか。

 欧米諸国では、公益法人は政治活動をしないことが免税の前提となっており、これを破れば免税などの特権も剥奪される。現在の政策のように、国民や企業にだけ負担を押し付けるのでは、経済はさらに冷え込み、住宅取得どころではなくなってしまうことを懸念している。

――財源問題と住宅取得への影響についてはどう考えているか。

 議員数の削減、議員歳費の縮小など、やるべきことはいくらでもある。50億円、100億円といった歳出の削減を、政府は大した額ではないというが、企業経営者は、そうした小さなムダを削り、必死に収益を上げている。政府も、増税ありきで考えるのではなく、その前にやるべきことがあるはずだ。

 そもそも経済の語源は、経世済民。「国(世)を治め、民を救済する」という意味だ。国民が喜ぶことをやらなければ、経済的繁栄にはつながらない。経済が成長すれば、結果的に歳入も増えることになる。

 私は常々、日本の税制には印紙税をはじめ不透明な特別会計など改善すべき要素が大変多く、その議論をさておき消費税増税を語るのは論外と主張してきた。欧米では生活必需品である食料に加え、住宅取得も非課税というのが一般的だと、声を大にしていいたい。

 住宅は、国家の産業の要であり、国民生活を支える最も重要な要素。国民の多くが質の高い住宅を手に入れられる社会の到来が、これからの日本の繁栄には欠かせないと、私は考える。
 

これで完ペキ! 「王道」の住宅選び 表紙画像
この記事が収録されている「週刊ダイヤモンド」別冊 2012年2月19日号 『新築マンション・戸建て 「王道」の住宅選び!』の詳しい内容はこちらからご覧いただけます。

マンション、戸建ての「最新」新築物件情報を、売主のメッセージと一緒にお届けしている特設サイト「新築マンション・戸建て 「王道」の住宅選び online」もあわせてご覧ください。