まもなく団塊経営者の大量引退期が始まり、中小企業の後継者不足による大廃業時代が訪れる。だが後継者がいても事業承継が上手くいくとは限らない。大切なのは人材を管理・育成する仕組み(人事評価制度)を確立し“組織承継”するという考え方だ。

中小企業経営者の“大量引退”が始まった

 2020年に約30.6万人の中小企業経営者が、新たに70歳に達するというデータがある。経営者の平均引退年齢は70歳前後とされているから、いわゆる団塊世代の経営者にとって、引退に向けて残された時間はもうわずかしかない。

団塊経営者の大量引退が始まる

 この大量引退時期の始まりが、大廃業時代の始まりになるという危惧がある。すでに2016年の時点で、休業・廃業した会社の数は過去最多を更新し、経済産業省の分析では現状、中小企業127万社が“後継者不足”の状態にあるという。つまり企業の財務体質は健全でありながら、人手不足からやむなく廃業するというケースが増えているのだ。

 ある大手M&Aアドバイザリー会社における過去5年間のM&A譲渡理由を見ても、主たる理由は後継者不足で、業績不振はわずか4%ほどだ。

 子供に継ぐ意思がない、子供がいない、適当な後継者が見つからない、さらに若い従業員の確保が困難で、事業の継続が見込めない、などが廃業の理由としてあげられる。広い意味での人手不足が、中小企業の廃業に拍車をかけているのだ。

M&Aにおける事業譲渡理由

 あしたのチームの高橋恭介社長は、この背景にはアベノミクスの功罪があると言う。

「アベノミクスの成果は、株価の上昇と雇用環境の改善ですが、これは事業承継という視点から見ると逆風で、株高で未上場株の時価総額も上がって相続税が高くなり、雇用環境が良くなったことで人手不足になった。じつはアベノミクスの裏側では、全国で中小企業が廃業する危機に陥るという流れが生まれているのです」

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