笑顔、視線、姿勢、距離などは、相手が無意識のうちに発している符号です。人間関係づくりのうまい人は、こうした相手からの符号を瞬時に読みとって、その場に適切なコミュニケーションがとれる人です。どうすればそんなことができるのか。そのポイントを紹介します。 

相手を理解するためには、よく観察する

 相手に好意を持っているとき、私たちは自然と笑顔になります。

 専門的に言うならば、このときの笑顔とは「好意という感情」が符号化されたものです。人間関係づくりのうまい人は、こうした符号を読みとるのがうまいのです。

 この符号を読みとることが「解読」(decoding)と呼ばれるものです。

「笑顔ということは、喜んでくれたのかな」

「目が泳いでいるのは、何かごまかしたいことがあるのかもしれない」

 と相手が発信する符号を読みとって、その情報を再構成することで、相手の急所を読みとることができるのです。

 ただ、符号というのは、必ずしも一つの意味だけを表すものではありません。不機嫌な顔は相手に対する怒りを示すこともありますが、体調が悪くてそうした表情になっていることもあります。

 パズルのピースを見るのではなく、その一つ一つがあわさった絵をみて物事を判断する。そうすることで、より的確な判断ができるようになるでしょう。

 もちろん正確な所を知るには、話をしてみることも必要です。

 ただ、最初のとっかかりとして、外見からヒントを掴んでおくことは人間関係を深めるうえでも重要です。相手を観察することが、無闇に話すことよりも相手を深く理解できることもあるのです。 

「こうありたい自分」は外見にあらわれる

 身につけることが義務づけられている制服は別として、相手が身につけているものは「こうありたい自分」をあらわしています。

 たとえばシャツの色一つ取っても「自分」があらわれます。ブルーのシャツをよく身につけている人は、仕事にもスマートさを求めます。感覚的なことよりも、どちらかというと合理的なアプローチを好む傾向が強いでしょう。

 黄色やクリーム色のシャツを好む人は、一人の人とじっくりつきあうよりも、たくさんの人とつきあいたいと考えています。社交的でつきあいやすい人が多いようです。

 色彩が心理に与える影響は昔から知られていることですが、好きな色にはその人の性格的傾向があるという報告もあります。

 スイスの心理学者であるルッシャーは、「色の好みには心理学的な意味が隠されている」とも言っています。相手の心を知るきっかけとして、色は一つの足がかりになるとも言えるでしょう。

渋谷昌三(しぶや・しょうぞう) 1946年、神奈川県生まれ。学習院大学文学部卒業、東京都立大学大学院博士課程修了。 心理学専攻、文学博士。山梨医科大学教授を経て、現在、目白大学大学院心理学研究科及び社会情報学科教授。非言語コミュニケーションを基礎とした「空間行動学」という新しい研究領域を開拓し、その研究成果をもとに、現代人に潜む深層心理を平易にユーモラスに解説した書籍で多くのファンを持つ。主な著書に『外見だけで人を判断する技術』(PHP研究所)、『手にとるように心理学がわかる本』(かんき出版)、『好感度200%UPの話し方』(ぶんか社)など。