急性虫垂炎の治療は手術か薬か、外科医が選ぶのは?

 ひと昔前は「盲腸炎」と呼ばれていた急性虫垂炎。大腸からちょこっと突起している虫垂が炎症を起こし、腸内の「悪玉菌」による二次感染が生じる。

 以前なら急性虫垂炎=開腹術、だが、最近は腹腔鏡による内視鏡下での手術が盛んに行われている。また軽症なら手術せずに抗菌薬で治すケースも増えてきた。

「切るべきか切らざるべきか」。外科手術のリスクは怖いが、抗菌薬治療は再発リスクがある。

 米ノースダコタ大学の研究グループは、単純な急性虫垂炎に対して「開腹術」「内視鏡術」「抗菌薬治療」のいずれを希望するかについて、インターネット調査を実施している。

 同調査は、最新のエビデンス(科学的根拠)に基づき、(1)三つの治療法のメリット、デメリット、(2)治療後の経過予測などを説明。その上で、自分もしくは子供が急性虫垂炎になった際の治療法の選択と理由を回答してもらった。回答者のおよそ1割が外科医だった。

 その結果、自分が急性虫垂炎を発症した場合、85.8%が内視鏡術を、4.9%が開腹術を選ぶと回答。抗菌薬治療は9.4%だった。子供の場合は、内視鏡術が79.4%、6.1%が開腹術、14.5%が抗菌薬治療だった。

 内視鏡.開腹術(手術)を選んだ理由は「早く治して、再発を避けたい」で、抗菌薬治療を選んだ理由は「手術や手術による合併症(敗血症や腸閉塞)を避けたい」だった。また、回答者の属性で解析すると、大卒以上はそうではない人に比べ抗菌薬治療を選ぶ傾向が示された。

 次に「手術」を選んだ回答者からサンプルを抽出し、面接調査を実施した結果、たとえ治療の合併症リスクや再発リスクが同じであっても「手術」を選ぶ傾向が示された。研究者は「盲腸炎=手術という先入観が治療を選ぶ際に影響する」としている。

 ちなみに、外科医は他の職業の人よりも抗菌薬を選択する割合が低く、手術でも開腹術を選ぶ傾向があった。当然といえば当然だが、内視鏡術を避ける理由は不明。

 もし内科医が回答者なら、どの治療法を選ぶのか興味ぶかい。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)