ドラッカー教授の主要著作のすべてを翻訳し、「日本における分身」と言われた上田惇生氏と、『経営者の条件』を40回読み、読書会を主宰し、ドラッカー学会監事を務める佐藤等氏。最強のタッグによる『実践するドラッカー【事業編】』。連載第4回はイノベーションを取り上げる。また、同書収録のワークシートの活用方法を佐藤等氏に聞く。
 

イノベーションとは、
新しい満足を生み出すこと

 ドラッカーは「既存のものは古くなる」という。どんなに成功したモデルであっても、いつか必ず過去のものとなる。同じことを営々と続けていては、生き残ることはできない。

 そのときどきに応じた「新しい満足を生み出すこと」、それがイノベーションである。なにも技術革新だけがイノベーションではない。ドラッカーは、「イノベーションは発明そのものではない」「技術ではなく経済や社会のコンセプト」だという。

 それでは、「新しい満足の種」はどこにあるか? 探し方にはいろいろあるが、たとえばいま社会を眺めてみて、ギャップや認識の差、不都合が生じていれば、それがイノベーション機会となる。

 『実践するドラッカー【事業編】』には、「ギャップの発見」シートがある。このシートを使って考えてみよう。

 記入にあたっては、以下の4つのポイントに気をつけてほしい。

1.ニーズや需要はあるのに、採算が取れない、うまくいっていない業界や事業はないか。
2.売り手の認識と、買い手の認識の間に差があるとしたら何か。
3.売り手の価値観と、買い手の価値観がずれているとすれば、どんな点か。
4.自社の業務プロセスでよく問題になる箇所はないか、そこにどんな問題が潜んでいるか。業界全体でボトルネックになっているプロセスはないか。
5.人手が余っているところ、逆に慢性的に足りない局面はないか。