人気ブログ「金融日記」を執筆する藤沢数希氏がホストとなり、ビジネス界の注目パーソンと対談を繰り広げる新連載「藤沢数希の金融対談日記」。1人目のゲストとして、かつてライブドアで取締役を務めた熊谷史人氏に登場いただいた。同じく上場廃止が噂されたオリンパスへの率直の気持ちを語った第1回、ライブドア事件の顛末と裏側を解説した第2回第3回は40万PVを超える反響を呼んでいる。今回は、誰もが考える「歴史のif」を聞いてみた。

フジテレビ買収は合理的な戦略の結果だった

藤沢  メディア(=テレビ)は世の支配者ですか。確かに、みのもんたや古舘伊知郎のコメントが世論作っちゃうみたいなことはありますよね。政治家もテレビ局に嫌われたら終わりですしね。ネット・メディアの影響力なんて、大手テレビ局に比べたらまだまだゴミみたいなものですよね。ホリエモンはこういったテレビによる世論誘導みたいなものを変えたかったのかもしれませんね。

vs元ライブドア取締役・熊谷史人氏(4)<br />もし、フジテレビの買収が成功していたら熊谷史人
(くまがい・ふみと) 
2002年ライブドア入社。2004年12月、最年少でライブドア取締役就任。ライブドアの資本政策や金融・投資ビジネスで中心的な役割を果たす。2006年2月、有価証券報告書の虚偽記載容疑で東京地検特捜部に逮捕。2007年6月、懲役1年、執行猶予3年が確定。現在、幅広い業種の会社に対するコンサルティング事業を展開。ツイッター・アカウント: @kuma1977

熊谷  そういう思いも多少はあったのかもしれませんが、当時の堀江さんのフジテレビ買収の考えは極めてシンプルで合理的でした。圧倒的な視聴者数と影響力を持つフジテレビを買収し、フジテレビからポータルサイト「livedoor」に顧客を強引に誘導し、ポータルサイト「Yahoo!」より知名度とアクセス数を持つものにしたかっただけなのです。

 今でもそうですが、当時から「Yahoo!」を運営するヤフージャパンはフジテレビより遥かに時価総額が大きく(3月2日現在、ヤフージャパン=約1兆5500億円、フジテレビ=約3000億円)、もし、「livedoor」が「Yahoo!」よりもアクセス数と知名度を獲得できれば、当然、ライブドアはヤフージャパンよりも時価総額で上回れる可能性が高まったわけです。

藤沢  まあ、テレビ局の時価総額が小さいのは、社員の給料が高すぎて株主まで回らないから、という話もありますが(笑)。

熊谷  確かにそうですね。みんなサラリーマン経営者で、経営者自身も株をあまり持っていないし、社員の労働組合も強いですから、個人的な損得を考えると、企業価値を上げて株のキャピタルゲインを狙うより、みんなで給料を沢山もらった方が効率的に儲かりますもんね。

藤沢  そういう株主の利益を軽んじる経営をしていたら、低迷した株価に目をつけた誰かが買収して、ダメな経営陣を追い出してもっと資本効率を上げる、というのが資本主義経済の自浄作用であり、本来のあるべき姿なのですが。