東京電力に「自ら変わろう」という意思はない──。家庭に大量導入される次世代電力計のスマートメーターをめぐり、今年10月に第1回が予定される国際入札。閉鎖的な電力業界にオープンな調達手段の道が開け、「1000億円以上のコスト削減になる」と期待される。ところが、思わぬ“ワナ”が仕掛けられていた。

 3月12日正午過ぎ、東京・内幸町のビルの一室に、続々とスーツ姿のビジネスマンたちが吸い込まれていった。東京電力が今後5年間で1700万台を導入しようとしている次世代電力計「スマートメーター」。その国際入札を実施するため、メーカー向けに説明会を開いたのだ。

「皆さんからご意見を頂戴して、素晴らしいメーターを作りたい」

 東電幹部がさわやかにあいさつをすると、スマートメーターの仕様について話し始めた。世界中から集まった約70社の担当者らは真剣に耳を傾けた。もし受注できれば「1回で百億円単位のビジネスになる」(外資系メーカー)というのだから、必死なのも当然だ。

 これは2~3年前には、あり得ない光景だった。

 米GE、米アイトロン、独エルスターなど、欧米大手メーター会社を筆頭に、中国や韓国などのアジア勢もちらほら。国内勢でも、ソフトバンクやパナソニックなど、未参入の企業の姿もあった。

 東電幹部は「新しい東電のコストに対する姿勢を示したい」と、オープン、透明で、コスト削減につながる国際入札の狙いを語った。

 東日本大震災による原子力発電所事故で巨額の賠償金を背負った東電。もはや過去のような“浪費”は許されない。スマートメーターの調達改革は、そんな「東電改革」のシンボルになりつつある。

 ところが──。

「これは完全な“出来レース”だ」。大手電機メーカー幹部は、冷笑する。東電と長らくズブズブの既存メーター4社(東光東芝メーターシステムズ、大崎電気工業、三菱電機、GE富士電機)の“不戦勝”が濃厚なのだ。なぜか。