世界的にデジタルトランスフォーメーションのうねりが高まるなかで、周回遅れといわれている日本企業。人手不足の深刻化とともに、「働き方改革」も待ったなしだ。そうした日本企業のさまざまな課題に応えるべく、クラウド型コンテンツ管理プラットフォームのBoxとマイクロソフトが連携を強化している。その狙いはどこにあるのか? Box Japanの古市克典代表取締役社長と、マイクロソフトの高橋美波執行役員 常務 パートナー事業本部長が語った。

あらゆるコンテンツを社内共有できるプラットフォーム

――2017年6月、Boxがマイクロソフトのクラウドプラットフォーム、Azureと連携することが発表されました。本日はその狙いと、連携によってどのようなサービスが提供されるようになったのか、さらには両社が目指す未来などについてうかがいたいと思います。まずは古市社長に、Boxについて簡単にご紹介いただけますか。

古市克典 Box Japan 取締役社長
PRTM Management Consulting(現 PwCコンサルティング)のパートナー、日本ベリサインの代表取締役社長を務めた後、2013年より現職。アジアパシフィック地域におけるBoxの成長と発展を指揮している。

古市 当社は2005年に米国で創業したクラウド型コンテンツ管理プラットフォームの会社です。ニューヨーク証券取引所に株式上場しており、日本法人は2013年8月に設立。翌2014年5月に日本語版サービスを開始しました。

 サービス内容はいたってシンプルです。マイクロソフトのOffice 365をはじめ、あらゆる業務用アプリで作成されたコンテンツ(ファイルなど)をBoxに入れると、チーム内や部内、社内のメンバーや場合によっては社外のメンバーも含めた必要な方と、必要なファイルをセキュアに共有できるようになります。そのファイルをクラウドに置いたまま特別なアプリケーションを使わずに閲覧することができますし、Office365などの編集ソフトウェアと直接連携して編集をしたり、添付ファイルの代わりにURLリンクをメールに貼り付けて送ったりすることも可能です。

高橋 マイクロソフトの多くのアプリはBoxに対応していますし、それ以外の業務用アプリで作成したコンテンツも、全部Boxに入れることができますね。

古市 Boxは非常に多くの業務用アプリとAPI連携しています。たとえばグラフィックデザイン用のソフトで作成したコンテンツを特別なアプリケーションを使わずに閲覧したり、業務アプリとの連携により直接注記を書き込んだりすることは可能です。グラフィックデザイナーがBoxに入れた新しい製品のデザインをチーム全員で見ながら、検討したりすることもできるわけです。

高橋 チームの働き方を大きく変える可能性がもたらされます。

古市 従来のワークスタイルでは、チームで共有するコンテンツは、各自のパソコンにコピーして保存するのが一般的でした。しかし、それではどれが原本なのかがわかりにくくなりますし、パソコンの容量を無駄に奪ってしまいます。

 また、従来のコンテンツ管理サービスは、対応する業務用アプリに制約があるので、一部のコンテンツはクラウド上で共有できても、対応していないコンテンツは手元に置かざるを得ないという課題を抱えていました。Boxなら、あらゆるコンテンツを共有できますし、検索が非常に簡単なので、どれだけ入れても、すぐに必要なコンテンツを取り出せます。

高橋 クラウドというと、どうしてもセキュリティを気になさる方がいらっしゃいますが、Boxはその点でも安心ですね。

古市 あらゆるコンテンツを入れられるということは、すべて1ヵ所で管理できるということです。監視は非常に容易ですし、7段階のアクセス権限設定や、全操作ログなどの機能も付いているのでセキュリティは万全です。BCP(事業継続計画)やDR(災害復旧)にも適しており、2018年5月からはGDPR(EU一般データ保護規則)に対応する予定です。

 こうしたセキュリティの高さや、Office 365などあらゆる業務用アプリのコンテンツが保存・共有できる利便性の高さが評価され、Boxは世界約8万2000社の法人ユーザーにご利用いただいています。そのうち69%はフォーチュン500に入っている大手企業で、ITやシェアリングサービスなどの先進企業にもお使いいただいています。日本でも資生堂、富士通など大手企業を中心にユーザーが広がっています。