いま、会計を英語で学ぼうという機運が高まっています。グローバル化が進むにつれて、海外企業の決算書を分析したり、外国人と数字を交えたビジネス・コミュニケーションを行なったりする人たちが増えているためです。そこでこの連載では、米国公認会計士の大津広一氏に、会計を英語で覚えるコツとプロの読み方について、書き下ろしてもらいます(全5回、毎週火曜日更新)。第1回は、「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングと、「ZARA」を展開するInditex(インディテックス)の売上・利益を比較します。

会計と英語は2つのグローバル言語

 グローバル時代の到来です。大手企業が国内新卒採用数を減らしたり、昇格時にTOEICなどの点数基準を設けるなど、私たち自身のキャリアや生活の身近なところで、急激な変化が起きています。英語力の必要性が日増しに高まっています。

 また、いざ海外に行こうとなっても、海外販路の拡大、海外工場への生産委託、あるいは現地での人材採用でも、最後は「採算が合うのか?」が必ず問われます。採算を計算するモノサシは会計です。会計力がなければ、海外でのビジネス・コミュニケーションは容易ではありません。

 会計と英語はグローバル時代の2つの共通言語です。それならいっそのこと、会計と英語を同時に学んでみてはどうでしょう。じつは、会計は英語で学んだほうがラクに覚えられます。

 日本の会計用語は、時おりとても難しい表現を目にしますが、英語の場合はほとんどが直接的な表現です。たとえば「建設仮勘定」という意味難解な勘定科目。これも英語にすれば「Construction in progress」、つまり建設が進行途中の勘定とわかります。

 会計で使われる言葉は、大学入試まで英語を学んだ方なら、十分すぎるほど簡単なものばかりです。プライス、セールス、コスト、インカム、プロフィット、グロスなど、すでにカタカナ英語として定着している言葉が多く、それ以外のものもコツさえつかめば難なく覚えられます。拙著『英語の決算書を読むスキル』では、こうした用語の事例もたくさん紹介しています。

ユニクロが英語公用語化を進める狙いとは?

 海外の決算書を英語原文のまま読めると、何が良いのか。ケースを1つ取り上げて考えてみましょう。

 ユニクロを展開するファーストリテイリング(以下、ファストリ)は、社内の公用語を英語にすることを明らかにしました。国内では圧倒的な一人勝ち、売上の大部分は国内にある同社が、なんでまた英語を公用語にしなくてはいけないのでしょう。同社の柳井正会長兼社長は、英語公用語化によって、いったい何を目指しているのでしょう? そしてまた、何を恐れているのでしょう?