顧客の個人情報、給与や人事などの労務関連書類、社外秘のマニュアルや企画書……。ビジネスの現場で日々発生する機密文書。これらを電話1本で即日回収し、厳重なセキュリティ管理のもと、その日のうちに箱ごと溶解させて情報を消し去り、証明書を即座に発行するスピーディーかつ使いやすいサービスが人気を集めている。「古紙のプロ」として70年の歴史を持つ明和製紙原料が手がける機密文書処理サービス「けすぷろ」だ。

1箱から、即日で。
「手軽さ」と「スピード感」で付加価値を創造

明和製紙原料 駒津慎社長明和製紙原料 駒津慎 代表取締役社長

「午前中にお電話をいただければ、東京23区内どこでも自社スタッフが回収に伺います。バインダーやクリップなどの分別も不要なので、段ボール箱に詰めていただくだけでOK。ダンボール1個から伺うので、大企業だけでなく弁護士さんや行政書士さんのような小規模事業所のお客様にもご利用いただいております」

 明和製紙原料の駒津慎・代表取締役社長はそう話す。同様の機密文書の処理サービスは他社にもあるが、シンプルな価格設定と即日中にミッションを完了するスピード感、1箱から頼める手軽さ、万全なセキュリティなどが同社の強みだ。

 回収車は、堅牢な黒い車体に鮮やかなオレンジのロゴが映える機密文書運搬用の特別仕様車で、二重三重のロックがかかるようになっている。荷物の搬入口はフルオープンできない設計で、積み込み作業中の外部からの視線をシャットアウトする。移動中はGPSで現在地がリアルタイムに把握できるようになっており、荷室内にもカメラを設置。さらに自社スタッフもウェアラブルカメラを装着し、荷物を引き受けた瞬間から処理場への引き渡しまで、全プロセスを映像で記録するという徹底ぶりだ。

 回収は、セキュリティ教育を受けた自社スタッフがあたる。パリッとスーツを着こなすその姿に、従来の「古紙回収業者」のイメージはない。現在は23区内のサービスだが、近隣地からの要望にはフレキシブルに応えており、今後のエリア拡大を検討しているという。

スタイリッシュな工場が
リサイクルのイメージを一新

大阪では「けすぷろ」の自社工場を保有、稼働させている大阪では「けすぷろ」の自社工場を保有、稼働させている

 同社は大阪でも「けすぷろ」事業を展開中だ。東京でのサービスと違うのは、機密文書粉砕専用の自社工場を持っており、持ち込みに対応している点だ。

 JR・地下鉄新大阪駅近くに位置するその工場を訪れた人はみな「古紙粉砕工場」という言葉から想像する姿とのあまりのギャップに驚くはずだ。厚いセキュリティを備えたその建物はスタイリッシュなデザインが施されている。

工場では1日あたり最大約40トンの古紙を処理することができる工場では1日あたり最大約40トンの古紙を処理することができる

「この工場は2010年に建てたものです。古紙処理の現場はこれまで一般の人の目から隠された存在だったので、それを『見える化』したいと考え、『ショールーム』というコンセプトで設計したものです」

 機密文書は1箱から持ち込みでき、ドライブスルー感覚で引き渡しが可能。処理量は1kg30円、家庭から出る古紙の処分に訪れる人も少なくない。希望すれば内部の見学も可能で、自分が持ち込んだ書類が粉砕されていく様子を見下ろせる。

 1時間あたりの処理能力は5トン。一般的な事務用シュレッダーのように繊維を切り刻むことなく粉砕するため、再生紙原料としてもリサイクル可能だ。