ノルマはチーム全体の責任
不動産販売業チームリーダーIさん(35歳)

気合と根性だけでは…

 Iさんは、首都圏の一戸建てやマンションを扱う不動産会社のチームリーダーだ。部下2人と3人チームで武蔵野地区の一戸建てを一軒一軒廻って、売買の情報を集めている。Iさんの上司は、バブルの最盛期に飛び込みの営業で、1日で何件もの土地の売買を成立させた経験がある。それから20年以上も経っているのに、今も「努力と根性」「根気と勇気」が合言葉だ。

 バブルのときはインターネットが無いので、「お隣が土地売買で、数千万の利益が出た」と話をすれば、誰でも話を聞いてくれた。しかし、今は、ピンポンと鳴らして、なかに誰かいても玄関を開けてくれる家はほとんどない。マンションもオートロックになっていて、在宅していても話もしてくれない。

 Iさんは、部下と相談して、一戸建てやマンションには手書きで手紙を書いていれるポスティングを取りいれた。コピーだとDMに見えてしまうので、家主の顔を想像しながら一枚一枚、丁寧に書いた。

「この家の庭がいかにお手入れされて素晴らしいのか」「建物のデザインがいかに素晴らしいか」を書いた。手紙をポストに入れるようになってからはダイレクトに訪問するよりは、話を聞いてくれる人が増えた。しかし、売買にはつながらない。不動産売買に対して人は、以前よりはるかに慎重になっているのだ。

憂鬱な朝礼。

 Iさんは毎週ある月曜日の朝礼がとても憂鬱だ。

「まだまだ、土地や建物を売りたい人、買いたい人はいる。その人に出会うために君たち営業がいる。不景気を気合と根性で乗り切ろう。売買成約できないのは、他社との情報戦に勝てないからだ。地元の人に顔を覚えてもらうためにも、飛び込みが基本だ」

 いつもの上司の話のあと、営業の進捗状況を常にチームリーダーが報告することになっている。