ビジネストラベルには移動が付きもの。その移動する時間をいかに効果的に活用するかによって、ビジネスの成果も違ってくる。東京大学在学中にNPOの立ち上げや起業をし、学生と企業人という二足のわらじを履きながら、仕事の最大効率を求め続けたオトバンク代表・上田渉氏に、出張時の効果的な仕事術について聞いた。

 

オトバンク
代表取締役会長 上田 渉氏
1980年神奈川生まれ。東京大学経済学部経営学科中退。在学中から複数のNPOを立ち上げ、IT企業の経営を経て、2004年オトバンクを創業。日本最大のオーディオブック事業者として拡大を続ける。著書に『ノマド出張仕事術』(実業之日本社)など。

「大学在学中の2004年に起業して、学生と社長業を兼務していたため、勉強と仕事を同じクオリティ、同じスピードでこなすノウハウを自分なりにつくり出す必要があったのです」

 と語る上田渉氏にとって、最強の味方は、ノートパソコン、スマートフォンなどのデジタルガジェットだった。

 当時と比べると、通信インフラが充実し、携帯電話やノートパソコンの性能もレベルアップ、クラウドサービスが充実するなど、モバイル環境は飛躍的に向上している。上田氏は、今こそ「いつでも」「どこでも」「同じクオリティ」で仕事ができる環境が整っていると言う。だからこそ、普段、仕事で会社のデスクに縛られている状態から解放される出張時は、自由に仕事ができるチャンスということだ。

クラウド・サービスを
使いこなす

“場”を選ばずに仕事をする際のポイントは、仕事環境を整えるための準備をすることだ。

「クラウドサービス、特にインターネット上にデータを保管するオンライン・ストレージ・サービスの活用は不可欠です。データの持ち運びが不要になり、複数の人と情報を共有することができます。例えば出張で使用するファイルを、すべてそこに上げておけば、出張中に自分が更新したデータ、あるいは社内のメンバーが更新した最新データを共有することができますし、出張先で急に資料が必要になってもすぐに対応できます」

 インターネットに接続できる環境さえあれば、すべてのデータを出先で取り出すことができ、必要最低限のペーパー以外、持ち歩く必要もない。まさに出張時こそ、クラウドサービスは効果を発揮する。

1単位30分の
「タスクリスト」作成

 出張に際しては、何より移動時間を効果的に活用したい。飛行機や電車に乗ったときは、あえてゆっくり休むという場合もあるだろうが、上田氏が推奨するのは、まず出張行程でやるべきことを「タスクリスト」としてまとめることだ。それを往路でやること、復路でやることに分類し、1単位30分で時間割を作る。例えば、約12時間のフライト時間なら、24単位。12単位を睡眠に当て、12単位を2単位ごとに六つのタスクを割り振ることもできる。

「往路はプレゼンのリハーサルや資料のブラッシュアップなど、復路は出張旅費の精算や出張報告を書くなど、すべてのタスクに時間制限を設けると、仕事は思いの外はかどります。

 そして出張に関するタスクは、出張中に完了させること。そうすれば、オフィスに戻ったときには、全力で次の仕事に向かえます」