第2回では、経済産業省の人事から始まり、エースと目されていた人材が外資系金融機関やコンサルタント会社へと流出している現実、そしてその大きな要因ともなった民主党政権の問題点を語ってもらった。今回は、メディアと身近で接してきた2人の体験談をもとに、現状のメディアが抱える問題点、個人が情報発信する重要性、さらに組織OBのあり方まで議論が深まる。
連載は全4回。最終回は、12月7日(金)更新予定。(構成/本多カツヒロ)

所属官庁によって転職の難易度は異なる

宇佐美 本にも書きましたが、大学の同級生と比べると、キャリア官僚はめちゃくちゃいい給料をもらっている、というわけではないんですよ。ただ、給料がよくないから辞めるという人は少なくて、勤務環境の過酷さや世間からの理不尽な批判といった総合的な労働条件が悪いので辞める人が多い。

第3回<br />報道機関の情報だけに頼る時代の終わり<br />SNSが隆盛を迎えたメディアのこれから
竹内 健(たけうち・けん)
中央大学理工学部 電気電子情報通信工学科 教授。1967年東京都生まれ。93年、東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻修士課程修了。工学博士。同年、(株)東芝に入社し、フラッシュメモリの開発に携わる。2003年、スタンフォード大学ビジネススクール経営学修士課程修了(MBA)。帰国後は東芝フラッシュメモリ事業の製品開発のプロジェクトマネジメントや企業間交渉、マーケティングに従事。2007年、東芝を退社し、東京大学大学院工学系研究科准教授を経て、2012年4月からは中央大学理工学部教授。フラッシュメモリ、次世代メモリの研究・開発で世界的に知られる。著書に『世界で勝負する仕事術』(幻冬舎新書)がある。

竹内 経産省の人は、辞めても民間で仕事が見つかるから辞められるわけですよね?

宇佐美 そうですね。普段から民間企業と接触があるので、他の省庁に比べれば官民の垣根が低いんじゃないでしょうか。これは公務員の転職サービスをしている会社の人から聞いたんですけど、厚労省なんかは転職がしづらいみたいですね。厚労省が扱っている医療や社会保障の世界というのは、一種の閉鎖的なムラで、その中で成果を上げても、特殊すぎて他の仕事で評価されにくいみたいです。

竹内 エンジニアの場合も、技術も細分化されているし、ライバル会社には転職しづらいので、実は、一般に思われているほどなかなか転用はきかないんですよ。

宇佐美 そうなんですか、意外ですね。転職しづらいとなると内部の人はどうやってストレス溜め込まないようにしているんですか?

 厚労省の話に戻ると、長妻さんが大臣だった時は、職員は悲惨だったみたいです。余談ですが、みんなが悪く言う人でもたいてい誰かが「いや、あの人もいいところがあるんだよ」とフォローするじゃないですか。長妻さんの場合は一切そういう話を聞きませんでしたからね(笑)。内部で不満がたまってしまって、サボタージュなんかもあったようです。

竹内 民間企業は政治家がいきなり上司になったりはしないので、突然おかしな人が上司になることはめったにありません。そういうのは官僚らしい悩みですね。