好評の「媚びない人生」対談シリーズ。今回は、明治大学で行われた安藤美冬氏、本田直之氏との3人でのスペシャルトーク「2012年度著名人講演会」の模様をお届けします。著書『冒険に出よう』が大ヒット中で話題となっている安藤氏ら3人が語る「学生時代にやっておいたほうがいいこととは」。(構成/上阪徹 撮影/石郷友仁)

年に5カ月は、海外に行っていた学生時代

一番怖いのは、頭が固まってしまうこと<br />【安藤美冬×本田直之×ジョン・キム】(前編)安藤美冬(あんどう・みふゆ) 株式会社スプリー代表。1980年生まれ、東京育ち。慶應義塾大学卒業後、集英社入社。2011年1月独立。ソーシャルメディアでの発信を駆使し、多種多様な仕事を手がける独自のノマドワークスタイルが、TBS系列『情熱大陸』で取り上げられる。『自分をつくる学校』の運営、新世代の暮らしと住まいを考える『ポスト団塊ジュニアプロジェクト』ボードメンバーのほか、連載の執筆、講演、広告出演などの活動を行う。2013年春創刊のシングルアラフォー向け女性誌『DRESS』では、「女の内閣」の「働き方担当相」を務める。

本田 今日は大学生を前にしているわけですが、安藤さんの学生時代というのは、どんな感じだったんですか。

安藤 大学に入学したら、その後は大企業に勤めることが、当時の私にとっては女性として道を開く唯一の道だと信じて疑いませんでした。なので、高校時代はけっこう受験勉強して慶応に入ったんですが、たがが外れてしまったように授業に行かなくなってしまって(笑)。

 大学でやっていたことと言えば、一つは海外経験です。1年の5カ月くらいは海外旅行に出ていました。夏、冬、春の長い休みを使ってインドとか、タイとか、ヨーロッパとか、いろんなところに出かけていました。明日からタイとベトナム、ラオス、カンボジアに一カ月半、行ってきます、と言ってバックパックを背負って家から出ちゃうような子どもでしたから、よく親は許してくれたと思うんですけど(笑)。
 また大学4年のときには、オランダの国立アムステルダム大学に慶応義塾大学から派遣してもらって、メディアや社会学について幅広く勉強させてもらいました。

 もうひとつは、アルバイトです。これは、海外に行く資金を貯めるのが主な目的でした。アムステルダム大学の学費は慶応で出していただいたんですが、生活費は自分持ちでしたから。留学費用も貯めていたんです。アルバイトは最大5つぐらい掛け持ちしていましたね。でも、アルバイトって、ルーチンワークにしてしまうと本当につまらないんですよね。だから、そうはしませんでした。

 例えば街頭で化粧品のサンプルを配るバイトをやったとき、品川駅で仲間と一緒に2日で3万個配ることになった。これは制限時間を考えるとかなりの難題でした。そこで、どうやったらできるかを考えて、立ち位置を動線から割り出して工夫したり、どう一言声をかけたらいいか、何秒前にどの角度でサンプルを見せると受け取ってもらえるか、を色々と試しながら探っていったり、こうした単純作業でも、頭を働かせれば面白くなるし、クリエイティブな作業に成りうる、ということに気がついて。これは『冒険に出よう』でも書いたのですが、社会人になってもこうした「小さな成功体験」が生きて、その後、自分の担当している仕事に趣向を凝らしていく「マイルールワーキング」というものに繋がっていきました。

本田 海外は行ってよかった?

安藤 そうですね。海外旅行に行くとサバイバル能力がつきますよね。例えばまったく知らない外国に行くことで「胆力」もつくし、行き先と時期に合わせて予算を管理し、準備を進めていく「計画力」が磨かれたり、何を持って行き、何を持たないのか、というところから「取捨選択力」も身につく。
 海外に行っても、できるだけガイドブックを持たないで旅行をするようにしています。ガイドブックに頼らず、事前に口コミやインターネットや雑誌や書籍など、色々な情報源にあたって、自分の感覚で目星をつけておきます。あとは、旅行先で直感を頼りにするだけ。現地では、空港でもらう地図だけを持って、あちこちをウロウロとするんです。

 ガイドブックを頼りにすると、スタンプラリーみたいに、人に推薦されたものをただこなすことになりがちですよね。実際に街を歩いて、おいしそうな店はどれなんだろうって、自分で立って見渡して見て、お客さんの入り状況とか、メニューの状況とか、店員さんの態度とか、そういうのを見て入ったりすると面白いわけです。
 やっぱりおいしかったり、まずかったりするんですが、ガイドブックの情報に頼らないで、自分の目と勘で確かめてみる。そういうことで、いろんなスキルがつくんじゃないかと思っています。