連載4回目は、いよいよ組織における予測市場の活用について解説する。アメリカでは、グーグル、マクロソフト、ヒューレット・パッカードなどの大手の先端企業が、ぞくぞく予測市場を導入して、大きな成果をあげている。一方、日本企業にはその活用事例がほとんど見られないという。その理由とは何か。
 

日米でなぜこれほど違うのか

 今回は、組織における予測市場の活用について考えよう。『普通の人たちを予言者に変える「予測市場」という新戦略』で紹介されているように、グーグルやヒューレット・パッカード、ベストバイといったアメリカの大手企業では予測市場が社内で用いられ、実際の経営に活用されている。

 一方、日本での導入は、実験的な導入を含めても、筆者の知る限り数えるほどしかない。その理由としては、しばしば神話的に語られる、その場の「空気」と合議を重んじる伝統的な日本企業の経営スタイルにあるように思える。

 もっとも、上手に運営された予測市場が集団の考えを如実に描写することに対する経営者の恐怖は、わが国に限ったことではなさそうである。何しろ、『普通の人たちを予言者に変える「予測市場」という新戦略』では、その経営的導入の困難さにくどいほど言及されているからである。

 なかでも、興味深い事例は、ある予測市場のソリューションを提供する業者が行ったクライスラー社へのプレゼンでの経験である。順調に思われたプレゼンだったが、業者の予想に反して予測市場の導入は見送られたという。その見送りの理由として、「君たちのプレゼンテーションを聞いて、予測市場が解決できる疑問、解決しなければならない疑問がたくさん見つかった。だが、解決したいと思う者が、あの部屋にはいなかったんだ。会社には扱いきれない情報だからね」と回答されたという。