先月ハーバード公衆衛生大学院の「血中カロテノイド濃度が高いほど将来に対して楽観的」という研究結果が米心身医学会の機関誌に報告された。

 カロテノイドは赤、オレンジ、黄色の天然色素。すべての植物や一部の菌類などが自前で合成している。ニンジンに含まれるβカロテン、ホウレンソウのルテイン、トマトのリコペンなどが有名どころ。老化や動脈硬化の原因と見なされている「フリーラジカル」に対抗する抗酸化成分として名高い。

 同報告は、中高年世代のよりよいライフスタイルを模索して1995年から断続的に行われている「Midlife in the U.S.」の一部。今回の調査研究では、およそ1000人の男女を対象に「楽観性尺度」のアンケートを実施。また血液サンプルから血中抗酸化成分の濃度を測定した。

 その結果、楽観性が増すほど血液中のカロテノイド濃度が上昇。最も楽観的なグループは、一般的なグループより13%も血中カロテノイド濃度が高かった。ちなみに、同じ抗酸化成分のビタミンEと楽観性との関係は認められなかった。研究者は「すべてとは言わないまでも、楽観性は野菜や果物の摂取や喫煙に対する姿勢と関係した」としている。つまり、野菜や果物を食べて禁煙を心がける健康志向は、カロテノイドなど抗酸化成分の摂取につながり、ひいては心身の健康と将来に対する楽観性を高める、ということ。少々乱暴な気もするが、自分を大切に考える健康的なライフスタイルが「将来への楽観性──肯定的な結果が生じることを期待する傾向」との好循環を生み出すのは当然かもしれない。近年、楽観性が高い人は抑うつ的になりにくいことも証明されている。

 人間が日常口にするカロテノイドは50種類ほど。ほとんどが植物由来なので、生での吸収率は10%程度と低い。しかし加熱した場合、特に油で調理すると吸収率は50%以上に上昇する。その際、欧州で抗酸化の効能表示が認められたオリーブ油を使うとよいだろう。楽観性を養うには色彩が鮮やかで、オリーブ油たっぷりの地中海式ダイエットがお勧めである。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)

週刊ダイヤモンド