『カヨ子ばあちゃんの うちの子さえ賢ければいいんです。』を刊行した「脳科学おばあちゃん」の連載もいよいよ最終回。
前3回にわたって、イクメンブームについて警鐘を鳴らしたり、育児教室で行われていることを開陳してきたが、最後に《クボタメソッド》の心髄とは何だろうか。
80歳のカヨ子ばあちゃんのメッセージをお伝えする。

《クボタメソッド》の心髄とは?

【最終回】<br />《クボタメソッド》の心髄は、<br />「自分の生を喜び、親に感謝できる子に育てる」こと久保田カヨ子(くぼた・かよこ) 1932年、大阪生まれ。脳科学の権威である京都大学名誉教授・久保田競氏の妻で2人の息子の母。約30年前に、日本における伝統的な母子相伝の育児法を見直しながら、自身がアメリカ在住時と日本で実践してきた出産・育児経験をもとに、夫・競氏の脳科学理論に裏づけされた独自の久保田式育児法〈クボタメソッド〉を確立。テレビなどで「脳科学おばあちゃん」として有名。著書に、『カヨ子ばあちゃん73の言葉』『カヨ子ばあちゃんの男の子の育て方』など。ズバッとした物言いのなかに、温かく頼りがいのあるアドバイスが好評。全国からの講演依頼もあとをたたない。

《クボタメソッド》を考案して、30年以上の歳月が経ちました。

 この間、本当に大勢の赤ちゃんの育児に携わり、なかには成人した子どももいます。
 もちろん、子どもが優秀にスクスクと育ってくれるのは、とてもうれしいことです。
 そのために《クボタメソッド》がお役に立ったのであれば、これに勝る喜びはありません。

 そして、《クボタメソッド》の心髄は、その子どもたちが一生を終えるときに到達すると言ってもいいでしょう。

 自分が死を迎えるとき、「つまらない人生だったな……」などとは思ってもらいたくはありません。そうではなく、

「自分の人生は本当にすばらしいものだった。お父さん、お母さん、私を産んでくれてありがとう。私の人生、本当に楽しかった。生きがいのある一生を送ることができました」

 このように思いながら、自分の人生に幕を下ろすことができる。そんな子どもに育っていたら、それこそ本望です。

 残念ながら私自身は、自分が育児に携わった子どもたちの将来にそこまで関わることはできませんが、願わくばそうあってほしいと心から思っています。

 それでも、あと16~17年、自分の脳を健康な状態に保つことができれば、いま脳研工房の2階の教室に通ってきている子どもたちが、20歳になる姿を見ることができるかもしれません。

 発達や発育が遅れていたり、心身に問題のある子どもたちが、元気な毎日を送り、やがてすばらしい大人になっていく姿を見るのは、このうえもない喜びです。

 そういう姿を、もう少し見ていたいと思うようになりました。

 実は、3年ほど前までは、「いつ死んでも怖くない」と公言していました。

 でも、いまは死ぬことが少しだけ怖くなってきました。いや、怖いというよりも、「まだ死ねない」という気持ちのほうが強くなってきたのです。

 世の中を見渡してみると、まだ育児を頭で考えているお母さんが大勢います。

 あるいは、純粋無垢な赤ちゃんが、まっすぐにすくすくと育っていけるような社会環境が十分に整っていないという現実問題もあります。

 このような問題を少しずつでも解決しながら、よい方向に進んでいく社会を見てみたい。そしていま、私の教室に通ってきている子どもたちが、20歳になったときにどうなっているのか、その行く末を見てみたいという気持ちが、ここにきて大きく膨らんできたのです。