最後となる今回は、有機ELから少し視野を広げ、「有機エレクトロニクス」の全体像を紹介しよう。最初に有機太陽電池、次に有機トランジスタについて述べ、最後に有機ELのうち、まだほとんど触れてこなかった有機EL照明について説明する。有機ELと有機エレクトロニクスの可能性を知ることで、日本の未来にさらなる希望をもってほしい。(構成・本丸諒)

有機エレクトロニクスが無機にとって代わる!?

 これまで電機業界をはじめとして多くのエレクトロニクス分野では、「無機」を前提にしてきたところがある。シリコン半導体も無機だし、LEDの窒化ガリウムは無機だ。

 しかし、有機ELをはじめとして、「有機エレクトロニクス」という新しい潮流が、これまでの無機エレクトロニクスにはない特性を発揮し、新しい研究成果、新しい技術を提供することで、これからの産業地図を大きく塗り替えようとしている。その拠点として位置づけられているのが、私が勤務する山形大学の「有機エレクトロニクス研究センター」であり、そこには国内外の専門家が集結し、最先端の装置が揃えられている。

 有機エレクトロニクスとは、一口で言えば、「有機半導体をベースとしたエレクトロニクス」のことで、
1. 有機EL
2. 有機太陽電池
3. 有機トランジスタ
の3つが主な柱といえる。

 特徴としては、(1)低分子や高分子の有機半導体材料を使うことで、(2)ペラペラで極薄の「曲げられる」ディスプレイや太陽電池、半導体を、(3)「印刷技術」を使って高速・安価につくることができることだ。

 そこで、最後となる今回は、有機ELから少し視野を広げ、最初に有機太陽電池、次に有機トランジスタについて述べ、最後に、有機ELのうち、まだほとんど触れてこなかった有機EL照明について説明することにしよう。

 実は、有機太陽電池や有機トランジスタなどの研究が有機ELテレビ(アレイ回路など)の発展にも貢献している面があるので、有機ELを知るためにも、有機エレクトロニクスの全体像を知っておくことはプラスになるはずだ。