地震対策としてまず考えなければならないのは、自分や家族の命を守ること。住宅なら、壊れない住宅に住むということが大前提だ。そのためには耐震補強や耐震構造の知識を身に付けておく必要がある。

 

 東日本大震災は津波による被害の大きさが目立ったが、1995年の阪神・淡路大震災では、死亡原因の約8割が建物の倒壊などによる圧死だった。特に、81年の新耐震基準以前の建物にその被害が集中した。

 それ以降、建物の耐震化対策が国により進められてきた。しかしこの基準を満たさない既存不適格住宅がいまだに多数存在している。

日本木造住宅耐震補強事業者協同組合が2006年4月〜11月末までに実施した耐震診断のうち、新耐震基準建物(1981年以降の建物)8756件から分析。( )内は平均築年数

 そうした住宅の持ち主が、耐震補強に関して気にするのは、費用面だ。しかし、日本建築防災協会の調査によれば、実際にかかった耐震補強費用は100万~150万円が最も多い。家族の命を考えれば、キッチンのリフォームよりも優先すべきだろう。

耐震診断・補強で
地震に強い住宅を

 新耐震基準以前に建てられた住宅の持ち主は、まずは耐震診断を受けることをお勧めする。耐震診断・耐震補強では、市区町村による助成や税制上の優遇が受けられる場合もある。ホームページで確認してみよう。

 また新耐震以降の建物でも、維持管理の仕方によって耐震性が低くなっている場合もある。築30年を超えメンテナンスが不十分な家も、耐震診断を受けたほうがいいだろう。

 耐震補強には、基礎の補強、耐力壁の補強、傷んだ構造材の補修など、いくつかの方法がある。改修後に求める耐震性能のレベルを決めて、それに合った工事を実施する。

 地震対策では、「耐震」構造にするのが一般的だが、「制震」や「免震」構造にできる技術も増えている。より高い効果を求めるならば、これらの工事を検討してみる価値はある。平たく言えば、耐震は命を守るが、制震や免震は命だけでなく、その後の生活も守ってくれる構造のことだ。

 既存の住宅に免震対策を施すには大規模な工事や多額の費用が必要となるので、実施するなら制震対策が一般的だ。制震の導入を検討する際は、部材の性能や工事価格、工期、そして工事をする工務店の実績などを比較検討して決めたい。

 地震で建物が倒壊し、被害を受けるのはその家の持ち主だけではない。通行人にケガをさせたり、壊れた建物が救急・消火活動を妨げたりすることもある。自宅への地震対策は、社会全体の安全対策でもあるのだ。