アベノミクス効果が不動産にもおよび、不動産マネーが動き出したといわれる今、果たして不動産は「買い時」なのか?2005年に出版した『1年で10億つくる!不動産投資の破壊的成功法』で現物不動産投資の世界に革命を起こしたといわれる金森重樹氏が、2月末に上梓した『改訂版 不動産投資の破壊的成功法』に至るまでの8年間の環境変化について語る。

金融工学の数字に、古いも新しいもありませんが……

 前著出版から8年。前著はもともとファンドの金融工学を個人投資家に使えるように噛み砕いた内容でした。数字に古いも新しいもありませんので、8年経った現在もそのロジックは100%妥当しますが、不動産投資を取り巻く環境が変わりました。この間の環境変化を概観してみます。

 2005年に日本の総人口はピークアウトしました。
 2007年頃までは世界的な金あまりの中で国内外の資金がファンドを通じて流入し、不動産価格は上昇しました。前著を読んですぐに不動産投資を始められた方の中にはこのタイミングで転売によって利益を得た方も多いです。前著で予測したとおりさいたま市のRC物件が値上がりして個人投資家の手が届かなくなったのもこの頃です。

 2007年夏頃から米国住宅価格が下落をはじめ、住宅ローンの延滞率の上昇からサブプライム住宅ローン危機が発生しました。サブプライムローンを組み込んだ債権が投げ売りされたことで2008年9月にリーマンブラザーズが倒産し、世界同時株安、金融収縮が発生します。実体経済も景気後退が起こります。

 2007年夏頃が都心分譲マンション価格のピークだったと思います。その後いくつかのデベロッパーが倒産します。国内金融機関もサブプライムローン関連の損失計上を余儀なくされる中でオリックス信託銀行(現オリックス銀行)、三井住友銀行が個人向けアパートローンのLTV(借入金比率)を引き下げます。その隙間をスルガ銀行が補います。

 2009年10月、ギリシャ国家財政の粉飾決算の暴露に始まる2010年欧州ソブリン危機によりユーロ加盟諸国(PIIGS)の経済危機が連鎖します。